潮が引いた時に
裸で泳いでいるのは誰か
総合商社の歴史と変化を簡単に振り返ると、政府の御用から始まった三菱商事、三井物産は国有財産の払い下げを受け、資源、エネルギーを主に扱う商社となっていった。
三菱商事、三井物産であれば、鉄鉱石を輸入してきたら日本製鉄など製鉄会社が引き取ってくれる。石油、LNGを調達したら東京電力など電力会社が買ってくれた。当初から大口顧客がいたから資源商社と呼ばれる彼らの地位は盤石だった。他の領域の仕事もやっているけれど、今も資源を主として扱っている。
一方、伊藤忠、丸紅は繊維の取引から始まった。生糸や綿花を仕入れて、紡績、製糸工場へ納入する。出来上がった製品を小売店に卸す。その他の商品も扱ったが、主製品は長らく繊維だった。
また、繊維、食料、香料などの商品は相場で動く。戦前から戦後の一時期まで、繊維商社はトレーディングもさることながら、相場を張るのが仕事の一部だったのである。
戦後の高度成長以降、規模が大きくなった繊維商社は資源、機械といった分野に乗り出して総合商社となる。戦前から続く、由緒正しい資源商社と同じカテゴリーに入った。しかし、顧客を見つけることに苦労した。三菱商事、三井物産が日本製鉄、東京電力と取引ができるのに対し、伊藤忠は自力で新たな顧客を見つけなくてはならなかった。