カリスマ和尚が言う「結婚も縁、離婚も縁」とは

 心をむしばむ妻からのシカト攻撃に対し、僕は専門家へ対処法を求めることにした。お相手は神奈川県藤沢市にある示現寺の「カリスマ住職」、鈴木泰堂さんだ。

 僕は鈴木さんを書籍『魂問答』(19年、光文社)で知った。同著はプロ野球で大活躍した清原和博さんと鈴木さんの共著。薬物依存の後遺症やうつ病で苦しむ清原さんと、鈴木さんによる対談録だ。

 その鈴木さんに、妻との「シカト沼」に悩む夫へのアドバイスをもらおうと取材を申し込むと、「拙僧で力になれるのなら」。

 電車とバスを乗り継ぎ、晴れた日の午後、示現寺に伺った。まずは夫婦の縁の捉え方から聞いてみる。すると、想定の斜め上からの回答が来た。

「仏様の教えを紐解いていくと、『何かをできることが縁がある』で、『何かをできないことが縁がない』となります。つまり、縁とは『やりたいと思ってできること』と言えます」

「結婚することはもちろん縁だけど、離婚することも実は縁なのです」

 夫婦の3分の1が離婚する(特殊離婚率)とはいえ、一般的にまだまだ離婚はネガティブに考えられている。一見堅苦しそうな仏教だが、その考え方はかなりフランクだ。

「妻を三毒から引っ張り出す存在に」

 鈴木さんの夫婦観を一通り踏まえた後、僕の家庭で起きている事態について説明する。育児ストレスから買い物依存症になって起こした妻の借金問題、妻の殴打で僕が肩を脱臼した救急車事件などを経て、「シカト沼」となった現状を話した。

 すると「こちらに来る時、入口の看板はご覧になりましたか?」と聞かれた。気になったので、スマホで写真を撮っていた。「三毒は利己心を加速させる」。鈴木さんのオリジナル語録なのだが、「三毒」の意味が分からない。

 鈴木さんによると、三毒とは仏教用語で「人間が持つ克服すべき三つの煩悩」を指す。貪(むさぼり、必要以上に求める心)、瞋(怒りの心)、癡(真理に対する無知の心)を毒にたとえている。三毒に染まると、他人の迷惑を顧みず自分の利益だけを追い求める「利己心」がどんどんひどくなる。それに注意を促したのが文言だ。