大分県で生まれ育ち、小・中・高と地元の公立校、塾通いも海外留学経験もないまま、ハーバード大学に現役合格した『私がハーバードで学んだ世界最高の「考える力」』の著者・廣津留すみれさん。ハーバードを首席で卒業後、幼い頃から続けているバイオリンを武器にニューヨークのジュリアード音楽院に進学、こちらも首席で卒業した。現在はバイオリニストとして活動しながら、テレビ朝日系『羽鳥慎一 モーニングショー』のコメンテーターとしても活躍している。先ごろは『徹子の部屋』に出演し、話題となった。
日本から突如、世界のトップ校に飛び込み、並み居る秀才・天才たちのなか、途方に暮れるような大量の難題を前に、どう考え、どう取り組み、どう解決していったのか? 著者が学び、実践してきたハーバード流の「考える力」について、自身の経験をベースに、どうすれば個人や組織が実践できるかを、事例やエピソードとともにわかりやすく紹介する。
※本稿は『私がハーバードで学んだ世界最高の「考える力」』より一部を抜粋・編集したものです。

【『徹子の部屋』『モーニングショー』で話題】知らぬ間に“社会人失格”の烙印を押される「文章力の落とし穴」Photo: Adobe Stock

アメリカスタイルの「APA」で
国際基準の引用の仕方を覚えておこう

ハーバードでは、ライティングの授業のときに「引用」の方法もフォーマット化して徹底的に教わりました。たとえば、文科系の引用フォーマットの基本に「APA」と呼ばれるスタイルがあります。APAとは、The American Psychological Association(米国心理学会)の頭文字をとったものです。

APAでは、引用先文献の種類によって、「著者名」「出版年度」「章」「ページ」などを明記するように定められています。文章をそのまま引用する場合には、二重引用符(“”)をつけ、さらにパラフレーズ(言い換え)をした場合も参照元を明記するのが決まりです。

これは一例で、このようなフォーマットが科学系や文科系など専門分野によって分かれており、使い方を細かく練習させられます。

他人の考えを無意識に盗用していませんか?

私たちは皆、先人の業績や著作を多かれ少なかれ参照したうえで思考を深めています。だからこそ正しく引用しないと、どこまでが他人の考えであり、どこからが自分の考えなのかが曖昧になります。オリジナルの文章の一部変更だけで済ませたら、最悪の場合は盗用が疑われるのです。

ハーバードでは、出典をまったく記していなかったり、他人の考えや文章の一部を自分なりに言い換えしたからといって引用をつけなかったりすると、大学の審議会にかけられます。正しい引用をしなかったばかりに、ある学生が強制的に休学させられたことが実際にありました。

「学生相手にそこまでしなくても……」と思うかもしれませんが、他人のアイデアと自分のアイデアを峻別するクセをつけておかないと、読者の信頼を得ることはできないどころか、法的問題になりかねないのです。

感覚が麻痺して他人の考えを発信するリスク

万が一、正確な引用ができないまま書いた論文が、何かのきっかけで『サイエンス』など世界的に権威のある専門誌に掲載されてしまい、のちに引用の不備が発覚すると、社会的制裁を受けることも考えられます。それを未然に防ぐため、ハーバードでは1年生のうちから徹底的に指導されるのです。

アカデミックな世界だけではなく、ビジネスの世界でも、他人の意見や発見を盗用するようなことは許されません。インターネットのまとめサイトなどでは、他人の考えをそっくりそのまま転載するようなことが平気で行われています。

日本でも数年前、ネットなどから収集した根拠のない健康情報をオリジナルコンテンツであるかのように並べたサイトが大炎上し、閉鎖に追い込まれる事件がありました。ネット上で「みんなやってるから大丈夫」と油断すると、感覚が麻痺して無意識にどこかで読んだ他人の考えを、自分の考えとして発信する怖れもありますから注意が必要です。

※本稿は『私がハーバードで学んだ世界最高の「考える力」』より一部を抜粋・編集したものです。ぜひチェックしてみてください!