皮膚に触れるだけで体を癒やす
「C触覚線維」とは

 連載中、美容鍼灸師やボディーメイクの名手、リフレクソロジストなど、7人のスペシャリストに取材を行い“ほぐしワザ”を聞き、著者自身、何度も試しながら、解説マンガを執筆。今回、その連載に加筆と修正を加えて、一冊の実用書にまとめたのが『ひとりほぐし』だった。

「先生方のお話はどれも興味深い内容でしたが、なかでも印象に残っているのが、桜美林大学の山口創教授と、エフェクティブタッチ・スクール校長の小澤智子先生のおふたりの取材ですね。最初に伺った臨床発達心理士の山口教授は、“皮膚に触れること”と心の癒やしの関係を科学的に研究している『タッチケア』の第一人者。取材では、近年発見された『C触覚線維』という神経線維についてお聞きしました」

「C触覚線維」は、皮膚の下にある感覚受容器のひとつ。感覚受容器とは、痛みや温かさ、冷たさ、振動などの周囲の環境を感知する器官を指す。それらの中でも「C触覚線維」は、柔らかさや人肌のぬくもりに反応するという。

「C触覚線維の反応は脳に伝わり、自律神経や情動に働きかけて『リラックス状態』を促します。すると、癒やしホルモンと呼ばれる『セロトニン』や『オキシトシン』の働きを活発化して、落ち着きややすらぎ、幸福感や自己肯定感などを増してくれるそうです。日常生活でも、背中を優しくさすってもらうと安心したり、苦しさが和らいだりするのは気のせいではないんだ、と人体のメカニズムに感動しましたね」

 もうひとりの小澤智子氏は、独自のオイルトリートメントメソッド「エフェクティブタッチ・テクニーク」を開発し、その技術をスクールで伝える指導者だ。

「エフェクティブタッチとは、解剖学に基づいて生み出された整体ほぐしメソッドです。オイルを使って肌と手のひらの密着度を上げ、その状態で優しくゆっくりマッサージをすることで、高いリラックス効果が得られます。取材時、お手本として小澤先生が私の腕に優しくマッサージをしてくれたのですが、1~2分でイスに座ったまま眠くなってしまったんです。このときは、技術を極めた先生の熱意と、先述の『C触覚線維』の効果を実感しましたね」

 同書には、こうした専門家たちの知識と技術が凝縮されているようだ。