東京六大学野球の秋季リーグがいよいよ開幕する。元・メジャーリーガーで早稲田大学野球部の小宮山悟監督は「正しい早稲田野球部の姿に戻す」を目標に掲げ指揮を執る。自身の学生時代に比べ「打たれ弱い」と感じる学生たちに対し、令和に合うアプローチで指導をしているというその工夫とは。(作家 須藤靖貴)
小宮山監督も実感する
チーム底上げの手応え
秋季リーグ戦の開幕である。
確かな成果を得て夏合宿を打ち上げた早稲田大野球部。
御年84歳のOB、徳武定祐をして「この秋は勝てるぞ、という雰囲気がある」と言わしめた。小宮山悟監督が母校のグラウンドに戻ってきて4年目の秋。目標に掲げた「正しい早稲田野球部の姿に戻す」に近づいてきていると、御大は目を細めた。
徳武は合宿全日程に帯同した。伝説の「1960年秋の早慶6連戦」時のキャプテンで4番打者。プロ野球でも活躍し、現役引退後は打撃コーチとして数々の名打者を育てた。小宮山が監督に就く以前から、20年間ずっと母校の練習を見てきた。
小宮山悟監督も、チーム力の底上げを実感している。
春から秋への試み、守備の大幅なコンバートも順調だ。そのためか「この夏、誰がもっとも伸びたか」という問いは難問らしい。みなが頑張っていた。「一番よく練習していたのは松木(大芽・4年)。ピッチャーでは鹿田(泰生・2年)が見違えるようになった。他にも……」という具合に、各人の成長ぶりを話した。
だが、それでも小宮山監督は「まだまだ」と表情を引き締める。
「ヘトヘトになるまで練習するのが合宿。午前練習でへたり込むまで追い込んで、午後にどこまでやれるか、と思っていたが、そこまでいかなかった」
合宿の拠点、新潟県南魚沼市のベーマガスタジアムの施設の充実ぶりは文句なし。ただしこの地の雲の流れは早く、天候がすぐに変わる。雨が降れば練習メニューを変更しなければいけなかった。
早稲田大学野球部を正しい姿に戻す。
小宮山の描く理想は深淵で哲学的でさえあり、一言で書き切るのは難しい。