ライバル・慶応に連敗し、早大野球部の春季リーグ戦は終わった。全試合終了後のスタッフミーティング。チームに危機感が足りないことを危惧する小宮山悟監督は、「このままでは組織は崩壊する」と、熱い言葉で部員たちを鼓舞した。秋季リーグに向けて、小宮山のチームビルディングは奏功するのだろうか。(作家 須藤靖貴)
「慶応にだけは負けられない」
意気込んで臨んだ早慶戦も連敗
盛夏のような強い日差しに迎えられた5月末の早慶戦。共に優勝には絡まないものの、入場者数は上限2万6000人に引き上げられ、多くのファンが神宮球場に足を運んだ。全席指定の内野席はほぼ満席。両校の付属校からの応援も駆けつけ、スタンドはいつも以上に軽やかでにぎやか。小学生の白い夏服、半ズボン姿が涼しげだった。
早慶戦は双方の大学にとって文化である。
「特に早稲田の学生に見てほしい。早稲田に入学して良かったと思ってもらえるような試合を、応援部のみなさんと作っていきたい」
小宮山悟監督はそう語っていた。「慶応にだけは負けられない」という意気込みがプレーに表れる。ファンは選手たちの「一球入魂」の躍動を目の当たりにしたいのである。
この春、早稲田は思うように勝てなかった。東大以外に勝った試合は明治戦1試合のみ。
「選手たちが能力を発揮できず、壁にぶつかって跳ね返されて、向こう側へ行けずにもがいている」
早慶戦の前、「早稲田スポーツ新聞会」の取材で小宮山は部員たちの苦しい胸の内を代弁していた。さらに、指揮官は選手たちの心理の先に踏み込んでいる。
「総じて、自身の能力を過信している。なんとかなるだろうという安易な気持ちでゲームに入り、でも自分の思うようにならない。練習で、できるつもりになっている。一つのプレーの完成は、本当は偶然なのかもしれない。そこを勘違いし、いざ神宮では思い通りにできない。その繰り返し」
伝統の一戦、ライバルに連敗。早稲田大野球部の春季リーグ戦は終わった。
「チームに危機感が足りない」
早大野球部チームビルディングの課題とは?
神宮から本拠の西東京市東伏見に戻ってのスタッフミーティング。小宮山は部員にこう話した。春の総括である。