JAと郵政 昭和巨大組織の病根#1Photo:JIJI

農協と日本郵政グループは戦後に蓄積した“財産”を食いつぶして生き永らえている。利用者から集めた莫大な金融資産があるために「当面はつぶれない」という慢心が生まれ、抜本的な改革が先送りされてきた。だが、若手の職員は組織が老衰の危機にひんしていることを察知し、沈みゆく巨艦から次々と逃げ始めている。特集『JAと郵政 昭和巨大組織の病根』(全15回)の#1では、農協と日本郵政の衰退の原因をデータで徹底解明する。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文、今枝翔太郎)

JA共済連と郵政の高収益を支える
上納金システムと金融資産

 農協の共済(保険)事業の大元締めであるJA共済連は2021年度、1029億円の純利益をたたき出した。

 ある農協関係者は、高収益の秘密をこう解説する。

「JA共済連は、保険の営業目標を各農協に割り振り、農協職員を意のままに動かすことができる。自身は汗をかかずに、農協から利益を吸い上げる“搾取の上納金システム”が確立しているからだ」

 一方の日本郵政も21年度に5016億円の純利益を上げた。かんぽ生命保険の不適切販売により、約3年も営業を自粛していたのにこれだけの利益を稼ぎ出せるのは、昭和の時代から蓄積してきた金融資産があるからに他ならない。

 農協と日本郵政が新卒学生や中途採用希望者から“安定した就職先”とみられていたのは過去の遺産があるからなのだ。

 ところが今、二つの巨大組織は、有能な若手職員が流出するという“異常事態”に陥っている。次ページでは、農協と日本郵政で起きている人材流出危機の実態とその元凶を明らかにする。