JAと郵政 昭和巨大組織の病根#番外編

営業再開後も新規契約が伸び悩む日本郵政グループのかんぽ生命保険。苦境を打開するために、かんぽ生命が講じた策は“禁じ手”だった。社員が自腹で保険を契約する「自爆」を奨励していたのだ。ダイヤモンド編集部は、自爆促進キャンペーンともいえる内部資料を独自に入手。特集『JAと郵政 昭和巨大組織の病根』の番外編では、このキャンペーンの内実を明らかにするとともに、契約獲得のために社員にプレッシャーをかけ、かつての手法に回帰していく日本郵政のあきれた実態に迫る。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

自爆した社員に豪華商品が当たる?
「インナーキャンペーン」の実態とは

 かつて不適切営業で世を騒がせたかんぽ生命保険が、“禁じ手”であるはずの自爆営業(営業実績を上げるために社員が本来、不要な保険などの契約を自腹で結ぶこと)に再び手を染めている――。そんなあきれた実態がダイヤモンド編集部の調べで明らかになった。

 かんぽ生命の不適切販売が問題になり、かんぽ生命と日本郵便が保険の営業自粛に追い込まれたのは、わずか3年前の2019年のこと。今年4月に営業目標を復活させ、本格的な営業再開へかじを切ったばかりだった(本特集の#3『かんぽ生命営業再開でも「保険契約ゼロ」の郵便局が続出する理由、コンプラ順守の自縄自縛』参照)。

 新たなスタートを切ったかんぽ生命だが、契約獲得の実績は営業自粛前の水準には遠く及ばない。そのため現場では、日に日に社員へのプレッシャーが強まっている。日本郵政の現役社員からはこんな声が上がる。

「『自爆』を『インナー』と呼んだり、『ノルマ』を『目標』に言い換えたりしているだけで、実態は不適切営業が行われていた以前と大して変わっていない」

 その最たる例が、今秋かんぽ生命が実施している「インナー」推進キャンペーンだ。社内でこの案内が出たとき、現場の社員たちは「明らかな自爆促進。契約実績が思うように上がっていないことを証明しているようなものだ」とあきれ返ったという。

 ダイヤモンド編集部は、本キャンペーンの内部資料を独自に入手した。社員がかんぽ生命と契約を結ぶと、抽選で“豪華”商品がもらえるという。これでは、自爆を推進するインセンティブを堂々と用意しているようなものだ。

 それでは、次ページからは社員に「自爆促進」とやゆされる活動の実態を見ていこう。