日本最大級の“圧力団体”とされてきた農業者政治連盟(農政連、農協の政治団体)と、全国郵便局長会(全特)の集票力の低下が止まらない。特集『JAと郵政 昭和巨大組織の病根』(全15回)の#14では、農協と郵便局長の政治力の衰えの真因と、両組織が抱える政治との癒着の問題を解明する。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
農協と郵便局関係者が
自民党との蜜月を喜べない理由
「一昔前は確かに圧力団体だったかもしれないが、いまや“圧力かけられ団体”だ」
あるJAグループ全国組織幹部は、農協の政治運動をこう嘆く。確かに、2012年に誕生した第2次安倍晋三内閣以降、農協は既得権益を次々と剥奪されてきた。
安倍首相(当時)は、農協の反対を押し切って環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加。農協がTPP交渉で農産物の関税を下げないよう政府をけん制していると、今度はJAグループの司令塔であるJA全中を解体して歯向かえないようにするという高等戦術に打って出た。
現在も農協は、政府、与党に生殺与奪の権を握られている。「『政権の方針に背くなら准組合員(非農家の組合員)の事業利用を規制するぞ』という政治的プレッシャーを感じ続けている」(JA全中関係者)のだ。多くの農協にとって非農家の組合員への金融サービスが収益の柱になっており、それを制限されるのは死活問題だ。
自民党の有力支持団体である全国郵便局長会(全特)も、政府、与党との関係は昭和の時代ほど良好ではない。
12年に成立した改正郵政民営化法により、日本郵政が保有する金融2社(ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険)の株式を全株売却することは「義務」から「努力目標」へと“緩和”された。全特からすれば、小泉純一郎政権による郵政改革を押し返した格好だ。
全特の郵便局長らは、金融2社の株式売却が進むと、コスト削減のために地方の郵便局が統廃合されるのではないかと懸念している。
しかし、こうした懸念に自民党は答えを出していない。過疎地の郵便局やサービスを維持する公共性と、私企業としての経済合理性の追求をどのように両立させるかという日本郵政グループ固有の問題について政治判断を先送りしているのだ。
農協と全特はいずれも、「准組合員の事業利用規制」や「金融2社の完全民営化」という構造改革のメスが入れられると思いきや、その改革は頓挫したまま “中ぶらりん”の状態で放置されている。
そして農協も日本郵政も、政治運動とは別の事業面において長期低落傾向に歯止めがかからず、もはや“政治頼み”で経営を再建できる段階は過ぎているように見える。
次ページでは、農協と全特の「集票力の衰え」の真因と、両組織が抱える「政治との癒着」の問題を明らかにする。