JAと郵政 昭和巨大組織の病根#7Photo:JIJI

日本郵政グループのトップ人事の選定が難航している。かんぽ生命保険の不適切販売の混乱収束のために就任した増田寬也・日本郵政社長と、池田憲人・ゆうちょ銀行社長に交代論が出ているのだが、候補者の選定に時間を要しているのだ。そうした中、意外なメガバンクの役員が“次期社長候補”として浮上していた。特集『JAと郵政 昭和巨大組織の病根』(全15回)の#7では、日本郵政グループのトップ人事に迫った。(ダイヤモンド編集部 新井美江子、千本木啓文)

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トップ人事が難航中

 元総務相の増田寬也氏は、かんぽ生命保険の不適切販売が発覚した直後、経営の経験がほぼないにもかかわらず日本郵政の社長に抜擢された。

 増田氏は就任当初、記者会見で安定した答弁能力を見せたことから、「優れた経営者だ」(全国郵便局長会幹部)などと称賛されたこともあった。

 ところが、日本郵政がダメージコントロールを終え、事業の立て直しのフェーズに入ったいま、「増田氏は結局、役人であり学者。事業のことは分からない」(関東地方の郵便局長)と、当初とは全く逆の評価が定着しつつある。増田氏が重用する飯塚厚副社長が財務省出身者でやはり官僚上がりということもあって、郵便局長たちからは「日本郵政のツートップは、現場の実態を知らない」という声が多く出ているのだ。

 実際に、日本郵政の経営陣と郵便局の現場は信頼関係が築けておらず、保険の営業再開による事業の正常化への道筋は見通せていない(本特集の#3『かんぽ生命営業再開でも「保険契約ゼロ」の郵便局が続出する理由、コンプラ順守の自縄自縛』で詳述)。

 増田氏も手をこまねいていたわけではない。楽天グループと物流事業やデジタルトランスフォーメーション(DX)で協業するために資本提携に踏み切るなど、手は打っていた。

 ただし皮肉にも、この資本提携こそ業績を圧迫する元凶となりつつある(詳細は本特集の#5『日本郵政に迫る「750億円減損リスク」、楽天との“ちぐはぐ”提携の末路』参照)。この提携に対する厳しい評価が定まりつつあることから、「後進に道を譲り、事業の再建は次期社長に任せるべきだ」という意見がグループ内で高まっているのだ。

 それでは、日本郵政グループのトップは誰になりそうなのか。ゆうちょ銀行の社長候補として、意外な人物の名前が浮上しているという。次ページでは、その実名を明らかにする。