医療機関の利便性を高めることが目的
“医療DX”のために生まれたマイナ保険証

「健康保険被保険者証(健康保険証)」は、健康保険に加入していることを証明する身分証だ。

 病院や診療所、薬局を利用したときに、窓口で患者が支払っているお金は、かかった医療費の一部で、現在は年齢や所得に応じて1~3割が患者負担分となっている。残りの7~9割を負担しているのが、患者が加入している健康保険組合で、医療機関では健康保険証を見て、医療費の請求先を確認している。

 この健康保険証の代わりに、マイナンバーカードの個人認証機能を使って、本人確認や健保組合の特定を行うのが、いわゆる「マイナ保険証」だ。

 導入の背景にあるのが、国が目指すデータヘルス改革だ。新型コロナウイルス感染症の感染拡大で、日本の医療現場の混乱ぶりが明らかになったが、その一因となっているのがIT化の立ち遅れだ。そのため、国は、医療分野にもデジタルトランスフォーメーション(DX)を取り入れて、患者の医療情報を有効活用することで、業務を効率化させて、安心・安全で質の高い医療を提供していくことを目指している。

 マイナ保険証を登録すると、過去にかかった医療費、特定健診や処方されている薬の情報などが、ポータルサイトで閲覧できたり、限度額適用認定証がなくても窓口で高額療養費の適用が受けられたりできるようになる。

 医療機関では、患者の健康保険の資格情報の入力が省けて事務作業が軽減できる。患者の同意があれば、医師や薬剤師なども、患者の医療情報を閲覧できるので、正確な情報に基づく、よりよい医療の提供が可能になるという。特に災害時は、患者の同意があれば、マイナンバーカードがなくても、ポータルサイトで管理されている情報を基に、必要な薬の処方や医療の提供ができる。

 このように、集約した医療情報を活用することで無駄な投薬や検査を省いて、効率的で効果的な医療の提供体制を構築し、ひいては国民医療費の削減につなげようとしているのだ。

 だが、病院や診療所、薬局がマイナ保険証を導入するためには、マイナンバーカードの情報を読み取るためのカードリーダーなどを設置しなければならない。

 そこで、国は設置費用の補助金制度をつくるとともに、マイナ保険証を利用できるようにした病院や診療所、薬局に対して、22年4月から、医療機関の収入となる診療報酬・調剤報酬にも加算を付けることにしたのだ。

 その報酬が、「電子的保健医療情報活用加算」というもので、「マイナンバーカードで健康保険の資格確認を行う体制を取っている」などの施設基準を満たしていることが、加算を取るための要件となっている。この診療報酬改定によって、マイナ保険証に対応している医療機関を利用した患者の医療費に、22年4月から次のような加算が付けられるようになったのだ。