新型コロナ感染拡大で飲食店、百貨店などの店舗は、休業や営業時間の短縮などを求められた。なかでも飲食業はコロナの温床のような扱いを受け、倒産する飲食店が続出した。その後、国や自治体の支援金が行き渡ると次第に倒産は沈静化したが、水面下で家賃滞納や給料未払いなどの訴訟が増えていることはあまり知られていない。(東京商工リサーチ情報部 二木章吉)
資金繰りの危機感などから
飲食店の3割超が廃業を検討
コロナ禍が直撃し、酒類の提供で成り立つ居酒屋・バーなどは売り上げが激減し、2020年の飲食業倒産は過去最多の842件を記録した。ただ併行して、コロナ禍で業績悪化に苦しむ企業には、実質無担保・無利子融資(ゼロ・ゼロ融資)や雇用調整助成金(以下、雇調金)の特例制度、持続化給付金などの支援策が拡充された。
特に飲食業者には営業自粛や時短営業に伴う協力金も支給され、翌2021年の飲食業倒産は648件に沈静化した。
ところが、コロナ関連の支援で最悪の事態を免れたはずの飲食業も安穏とはできない。人出が戻っても感染防止への警戒が定着した今、飲食業は訴訟リスクが待ち受けている。
東京商工リサーチが8月までに実施したアンケート調査で、過剰債務(借入過多)と認識する飲食店は77.1%、借入金の返済見通しを懸念する飲食店は64.5%と、他業界に比べて資金繰りに関する危機感が断トツで高い。その結果、廃業を検討する飲食店は33.3%に及ぶ。