銀行は一刻も早く
「残高が少ない個人顧客」を切り捨てたい

 まずは、最初の変化です。地方銀行を中心にメガバンクから信用金庫まで、かつては人気の就活先だった銀行の収益性が落ちてきています。実はここが、「デジタル給与解禁」が始まる震源地です。

 銀行は過去10年間、支店のリストラや正規雇用を非正規に置き換えるなど、さまざまな構造改革を行ってきました。口に出しては言えないことですが、この先銀行にとって重要なことは「顧客のリストラ」です。つまり、収益性の悪い顧客を減らすことで銀行が収益性の高い顧客にフォーカスできるようにすることです。

 銀行が逆風下でも収益を維持するためには、法人は業績の良い中堅企業、個人は富裕層から中流の預金をたっぷり預けてくれる層にフォーカスしたいところです。一方で、一番優先順位が低いのは「残高が少ない個人顧客」です。

 そのために銀行業界が導入したいと考えているのが、「口座維持手数料を当たり前の文化とすること」です。アメリカでは、銀行の口座維持手数料が当たり前のように導入されています。銀行によってレベルの違いがあり、例えば口座の平均残高が1500ドル(約22万円)を維持できないと、毎月ペナルティーとして12ドル(約1700円)が手数料として引き落とされるケースもあります。

 日本でこのようなことができるかどうかはわかりませんが、実際は残高の少ない銀行口座は維持するだけでそれくらいのコストがかかっています。銀行業界は、本音では一刻も早く口座維持手数料を制度化したいと考えているのです。