国立新美術館や大手スーパーなどが導入 ガラスコーティング剤で省エネを実現

――御社のガラスコーティング剤「フミンコーティング」は省エネルギーにつながるそうですが、どんなものですか?

八木澤 窓ガラスに塗ると紫外線を約90%、赤外線を約70%カットするコーティング剤です。アンチモンやインジウム等の伝導性金属酸化物を原料にしています。

 建物中の窓ガラスに塗膜すれば、太陽光に含まれる赤外線や紫外線をカットするので、夏は室内の温度上昇を防げますし、お肌の健康も守れます。可視光線透過性も優れているので、ガラスに塗っても肉眼ではわかりません。いわば「透明な日傘」です。

 一方、冬は窓ガラスから放熱しにくくなるので、室温の低下を最小限に抑え、結露を防ぐ効果もあります。一度塗れば、メンテナンスはほとんど必要ありません。

――省エネ効果はどれぐらいあるのでしょうか?

国立新美術館や大手スーパーなどが導入 ガラスコーティング剤で省エネを実現代表取締役・八木澤勝夫氏。1951年生まれ。福島県立福島商業高校卒業後、仙台税理士専門学校を経て、日本シエーリング入社。78年に独立し、フミンの前身である医薬品卸会社を設立

八木澤 例えば東京の国立新美術館には全館の窓ガラスに塗膜されているのですが、導入前と比べると、年間220万kw時の電力使用量の削減につながっています。こうした効果が認められ、現在は大手スーパーやホテルチェーンなどで採用されています。最近はトラックや船の窓ガラスに塗布したいという依頼もいただきます。国内のみならず海外でも需要があり、スペインにも拠点があります。

――創業時から手がけているのですか?

八木澤 いいえ、創業当初は製薬メーカーの営業をしていた経験を生かし、医薬品の卸売りを手がけていました。その後、農業資材の製造・販売に方向転換。この農業資材を全農経由で販売することになり、時間に余裕ができました。そのとき、新たな事業として目を付けたのがガラスコーティング剤です。

 きっかけは冬にガラスの結露を眺めていたことでした。結露は室温と外気温の差が一定以上になると発生しますが、これを防ぐ方法として、携帯電話のタッチパネルのようなコーティングをすることを思い付いたのです。2002年頃からコーティング剤の開発を始めました。