――すんなり完成したのでしょうか?
八木澤 簡単ではありませんでした。一番の問題は均等に塗膜できないこと。当初はスポンジで塗っていたのですが、どうしても下に垂れてしまい、まだらになっていました。かといって、重ね塗りをすると、ガラスが曇ってしまいます。
試行錯誤の末にたどり着いたのが、スプレーガンで吹き付けて、直後に温風で乾かすことです。温風の温度や強さ、溶剤の配合などを微調整した結果、均等に塗膜を形成できるようになりました。07年に特許を取得しています。
――作業するのは難しいのでは?
八木澤 吹き付け作業は弊社の社員が行いますが、そこまで難しくありません。
重度障がい者施設の障がい者の方にも施工を一部手伝っていただいています。
――開発後は順調に成長したのですか?
八木澤 浮き沈みがありました。一時は120以上の代理店があったのですが、東日本大震災後に激減。また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で受注が減りました。以前はシンガポールにも拠点を構えていましたが、畳みました。
このままではつぶれると融資を受けようとしたのですが、複数の金融機関に応じていただけず、困り果てていました。
――苦境をどう切り抜けたのですか?
八木澤 そのとき助けてくださったのが、福島信用金庫さんです。商工会議所の会議でたまたま理事長と同席したので現状を話すと、「私どもがすぐ対応します」と、翌日には営業の方が来てくださいました。信用金庫の強みはフットワークと聞いてはいましたが、こんなにフットワークがいいとは思いませんでした。
融資のおかげで、沈没寸前の状態から脱することができ、昨年は一般財団法人省エネルギーセンターの「省エネ大賞」で中小企業庁長官賞を受賞しました。大規模案件の引き合いも来ています。これもすべては福島信金さんのおかげです。
●株式会社フミン 事業内容/省エネガラスコーティングを用いたガラス塗装工事業、農業用資材・環境対策資材の製造販売、従業員数/4人、所在地/福島県福島市舟場町1-20 リアライズ福島駅前通りビル506号、電話/024-597-8383、URL/fumin.jp
――今後の抱負をお聞かせください。
八木澤 私が憂えているのは、日本は脱炭素の取り組みがあまりにも進んでいないこと。弊社のコーティング剤は二酸化炭素削減にもつながるので、少しでも貢献したいと考えています。
そこで考案したのが、コロナ禍で業績不振に陥った企業にガラスコーティングの工事をお手伝いいただくこと。国の「事業再構築補助金」は、震災やコロナで経営が厳しい企業が新事業を行うと支給されます。その新事業として弊社のガラスコーティング事業をしていただければ、苦しんでいる企業の助けになりますし、建物の省エネ化も進むというわけです。ぜひお声がけください。
(取材・文/杉山直隆、「しんきん経営情報」2022年10月号掲載、協力/福島信用金庫)