がんは日本人の死因トップの病気であるにもかかわらず、検診受診率は低く、精度面でも制度面でも課題がたくさんある。「子宮頸(けい)がん」は女性特有のがんだが、特に若い女性は「恥ずかしい」「痛い」などの理由で受診率が非常に低い。しかしこの夏、アメリカで新しい検査方法が発明された。独自の生理用ナプキンを使い、婦人科に行かなくてもいいという画期的な方法だ。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

子宮頸がんは五大がんの一つだが、
市町村の検診受診率はわずか15.7%

子宮頸がん検診の内診のイラストPhoto:PIXTA

 日本のがん検診受診率は30~40%で、世界的に見ても低いことがよく知られている。たとえば五大がんの一つである「子宮頸がん検診」の受診率は、OECD加盟国36カ国中、日本は42.4%で33位(2017年調査)。1位のオーストラリア86.67%と比べると、2分の1にも満たない。

 しかもこれは、職域健診も含めた数字で、主に専業主婦を対象とする市町村の検診では、コロナ禍以前の令和元年(2019年)の調査でさえ15.7%という低さなのである。

 肺がんには胸部X線検査、胃がんにはバリウム検査(胃部X線検査)、大腸がんには便潜血検査が行われており、なかでも人気がないのがバリウム検査だが、子宮頸がんの細胞診や乳がんのマンモグラフィー検査に比べれば、抵抗感ははるかに小さいだろう。

 マンモグラフィーは泣きたくなるほど痛いし、子宮頸がん検査は恥ずかしく、時に痛みを伴うため、できることなら受けたくないと女性なら誰もが思っているはずだ。内閣府が調査した「がん検診未受診の理由」(2016年)では、一番多いのが「受ける時間がない」(30.6%)、2番目が「健康状態に自信があり、必要性を感じない」(29.2%)、3番目は「必要な時はいつでも医療機関を受診できる」(23.7%)となっているが、乳がん検診を受けたくないのは「痛いから」であり、子宮がん検診は「恥ずかしい」と「痛いから」であることは調べるまでもない。

 男性のために説明すると、子宮頸がん検診は、内診台という専用の椅子に腰かけ、M字開脚で下半身をさらし、担当医が子宮頸部(子宮の入り口部分)をブラシやヘラなどでこすって、細胞を採取する、というものだ(イラスト参照)。

 ちなみに「海外に比べて日本の検診受診率が低いのは、文化の違いというか、女性特有の部位を見せることへの抵抗感もあるでしょう」と婦人科がんの専門医は皆言うが、受診率が日本よりもずっと高いイギリスでも、専門家は「多くの若年女性は羞恥心や心地悪さのため、子宮頸がん検診を受けようとしない」と述べている。