人生100年時代は、健康こそ最大の資産です。
しかし40歳を越えると、がん、糖尿病、腎臓病といった病気を避けては通れません。国立がん研究センターによれば、40~49歳のがん患者数は、30~39歳と比べると3倍以上です(2018年)。もちろん50代、60代と年齢を重ねるにつれ、がん患者数はどんどん増えていきます。
本連載は、毎日の食事から、大病を患ったあとのリハビリまで、病気の「予防」「早期発見」「再発予防」を学ぶものです。著者は、産業医×内科医の森勇磨氏。「予防医学ch/医師監修」の管理人でもあり、動画は「わかりやすい説明で参考になる」「怖いけど面白い」と評判で、チャンネル登録者は27万人を超えています。初の単著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を出版し(9月29日発売)、がん、糖尿病、高血圧、食事、生活習慣、人間ドック、メンタルというさまざまな観点から、病気にならない知識と習慣をあますところなく伝えています。

知らないと絶対後悔する「子宮頸がん」の予防法Photo: Adobe Stock

子宮頸がんは「予防できるがん」です

 子宮頸がんは若者だけのがんではありません。20~50代まで幅広い年齢層が注意しなければいけないがんです。残念ながら、今後日本で子宮頸がんの犠牲者が増加すると予想されます。

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 その誘因となっているのが、2013年の「HPVワクチン接種差し控え事件」です。HPVとは「ヒトパピローマウイルス」というウイルスの略称です。子宮頸がんのおよそ95%はこのHPVが原因とされており、ワクチンが非常に有効な予防方法になってきます。

 またHPVは咽頭がんや陰茎がんの原因になることもあり、アメリカやイギリスでは男性にもワクチン接種が推奨されています(私も接種しています)。

 HPVワクチンの接種で子宮頸がんの発症リスクが大幅に軽減、そしてHPVに関連したがんの発症を抑えるなど明らかな有効性が世界的に示されています(※1、2)

 日本でも2013年の4月に満を持して定期接種がスタートしました。

 しかし、ここで大きな問題が生じます。「接種後の中学生に、歩行困難・けいれんといったワクチンの副作用と思われる症状が出現した」というニュースが大々的に報じられたのです。中学生の女の子がけいれんする様子を録画したセンセーショナルな映像がテレビで流され、HPVワクチンへのネガティブな印象が世間に植え付けられてしまいました。

 その結果、厚生労働省は「今後はワクチン接種を積極的には推奨しない」という声明を発表。70%だった定期接種率が0.6%と極端に低下し、現在に至ります。

先進国で接種していないのは日本だけ

 先進国の中でHPV予防接種が普及していない国は例がなく、「打って当たり前のもの」と認識されています。2015年にはWHOから日本は名指しで批判されました。「HPVワクチンが普及していけば、世界から子宮頸がんを根絶できると見込まれている。その足を引っ張るな」という世界からの意思表示でしょう。

 世界では92ヵ国で定期接種が行われていますし、現にオーストラリアでは2028年までに新しい子宮頸がんの患者がいなくなる、というシミュレーションも出ています(※3)