日本の魅力(3)
「庭園」~西洋の庭園~

対称性や規則性を表現する「西洋の庭園」対称性や規則性を表現する「西洋の庭園」

 一方、西洋や中東は、日本やアジアほど水や自然に恵まれていませんでした。古くから、自然は脅威・克服する対象であり、科学が発展したため、西洋の庭園では「自然をコントロール」する人工美が表現されています。自然と人工物はきれいに遮られ、シンメトリーな造りになっていることが多いです。自然界には存在しない、直線や真円を多用しているのも特徴です。

 前回の記事で紹介した「建築」でも、教会は豪華絢爛なデザインや美しい絵画での装飾など、圧倒されるほどの「人工美」が特徴ですが、日本の寺社はシンプルな装飾が多く、森や川など自然と隣接して建てられ、庭園を含め落ち着いた「自然との調和」をベースに造られています。他国の建造物・庭園を日本と比較してみると、そのユニーク性がよくわかります。

日本の魅力(4)
「伝統工芸」~わびさび~

『今こそ学びたい日本のこと』P.71『今こそ学びたい日本のこと』P.71 拡大画像表示

 最後に紹介するのは日本の「伝統工芸」です。

 日本には、華やかで美しい伝統工芸品も数多くあり、マジカルトリップのツアーでも日本の伝統工芸品をテーマにしたツアーは人気です。今回は、その中でも独自の美的観念である「わびさび」を感じられる工芸品を紹介します。

「侘び(わび)」とは「過剰なものが削ぎ落とされたシンプルな状態や、ものの不足に美しさを見出す心」を指し、「寂(さび)」とは「時間とともに古びることで新しい美が加わる」という考えです。

 日本には、茶道用の陶器のように、土本来の色合いを生かし、釉薬や装飾をあえて行わないシンプルさに美を見出す文化があります。一見、質素や武骨に感じてしまうようなデザインに、日本は古くから趣を感じ、大事に使いこむことで生じる色合いの変化を「味」として楽しむ「寂」の文化が浸透しているのです。スティーブ・ジョブスは「わびさび」や「禅」の思想を好み、初代iPodのシンプルさを追求したデザインにも、この「わびさび」の思想が影響しているともいわれています。

金継ぎが施された陶器金継ぎが施された陶器

 また、「わびさび」の思想が最も顕著に表れているのが、「金継ぎ」という文化です。「金継ぎ」とは、割れてしまった陶磁器を漆でつなぎ合わせ、そのつなぎ目に金粉や銀粉を装飾する修復技法です。「割れた」「欠けた」というネガティブな「傷跡」を、修復過程で金や銀で美しく装飾することで、新たな美や趣を与え、さらにものの寿命まで延ばすという、ものを大事にする日本人の精神性が伺えます。

 また「わびさび」は、千利休により確立されましたが、千利休は「侘び茶」という独自の茶道の流派も確立しました。侘び茶は遊びの要素を極力減らし、心の交流を中心とした緊張感のある茶の湯が特徴です。優雅なイメージのある西洋のアフタヌーンティーとも対照的で、「茶」の文化ひとつとっても日本と西洋には違いがあることがわかります。