テレビ局TBSを退社したのち、プルデンシャル生命保険で「前人未到」の圧倒的な業績を残した「伝説の営業マン」である金沢景敏さん。営業マンになった当初はたいへん苦労しましたが、あることをきっかけに「売ろう」とするのをやめた結果、自然にお客様から次々と「あなたからサービスを買いたい」と連絡が入るようになりました。その営業手法のすべてを明かした初著作『超★営業思考』はベストセラー化。本記事は、同書では紹介し切れなかった、「図々しいお願い」を受け入れてもらうための「話し方」についてご紹介します。(構成:前田浩弥)。

「図々しいのに愛される」人がひそかにやっていることとは?写真はイメージです Photo: Adobe Stock

「図々しく、堂々と、正直に」お願いする

 仕事をするうえでは、誰かに「お願い」することを避けることはできません。

 どのように周りの人に「お願い」をして、力を貸してもらうか。この巧拙が、仕事の巧拙に直結すると言っても過言ではないでしょう。

 僕がプルデンシャル生命保険の営業マンだった頃も、日々、さまざまな人々に何かを「お願い」していましたが、最終的にたどり着いたのは、小手先のテクニックは不要ということ。そして、「図々しく、堂々と、正直に」ということこそが「お願い」するうえで、最も大切なことだと確信するようになりました。

 そもそも、お願いというものは、大なり小なり、図々しいものです。

 だから、「こんなことをお願いしたら、ちょっと図々しいかもしれないな……」というときには、必ず、「図々しいお願いで恐縮ですが」とバカ正直に切り出していました。

 正直な心情を伝えているだけですが、これは魔法の言葉でもあります。「今から言うのは、図々しいことです」と宣言しているわけですから、向こうも断りやすいですし、こちらも、断られたところでさほど傷つきません。「断る」のは相手にとっても心理的な負担となりますが、それを軽減することができるわけです。

 しかも、いざお願いすると「なんだ、そんなことか! お安いご用だ」と、話がトントン拍子に進むことが結構多いものです。

「図々しいのに愛される」人がひそかにやっていることとは?金沢景敏(かなざわ・あきとし)
元プルデンシャル生命保険ライフプランナー AthReebo(アスリーボ)株式会社 代表取締役
1979年大阪府出身。京都大学ではアメリカンフットボール部で活躍。大学卒業後、TBS入社。テレビ局の看板で「自分がエラくなった」と勘違いしている自分自身に疑問を感じて、2012年に退職。完全歩合制の世界で自分を試すべく、プルデンシャル生命保険に転職した。当初は、思うように成績を上げられず苦戦を強いられるなか、一冊の本との出会いから、「売ろうとするから、売れない」ことに気づき、営業スタイルを一変させる。そして、1年目にして個人保険部門で日本一。また3年目には、卓越した生命保険・金融プロフェッショナル組織MDRT(Million Dollar Round Table)の6倍基準である「Top of the Table(TOT)」に到達。最終的には、自ら営業をすることなく「あなたから買いたい」と言われる営業スタイルを確立し、TOT基準の4倍の成績をあげ、個人の営業マンとして伝説的な業績をあげた。2020年10月、プルデンシャル生命保険を退職。人生トータルでアスリートの生涯価値を最大化し、新たな価値と収益を創出するAthReebo(アスリーボ)株式会社を設立した。著書に『超★営業思考』(ダイヤモンド社)。

卑屈になってはいけない

 ただし、「図々しいお願いで恐縮ですが」という言葉を、卑屈な気持ちで言ってはいけません。それは、自分にとってもマイナスですし、相手にとっても決して快いものではないからです。

 大事なのは、「なぜ、そのお願いをするのか?」という真意を、正々堂々と口にすることです。

 例えば、生命保険の営業マンにとって大切なのは、お客さまから別の方をご紹介いただくことです。新しいお客さまと出会えなければ、生命保険の営業マンは終わりですから、これは死活問題なのです。

 だから、僕は、だいたい次のように、「紹介」のお願いをしていました。

「図々しいお願いで恐縮ですが、お知り合いの方をご紹介いただけないでしょうか。僕は、◯◯さんの保険の担当として、これからも長くお付き合いさせていただきたいと思っていますが、僕はフルコミッションの営業マンなので、次のお客さまに繋がっていかないとこの仕事を続けることができません。だから、ぜひ、お知り合いの方をご紹介いただきたいんです。

 正直、厳しい仕事ですが、僕は、保険というものを通じて、お客さまの大切な人生のお役に立てることに、ものすごいやりがいを感じていますし、いろいろな方々とご縁をいただけるのを心から楽しんでいます。

 僕は、保険を売りたいとは思っていません。

 ただ、僕自身、保険というサービスに助けられたことがあるので、ご紹介いただいた方の助けになるような情報をお伝えしたいのです。保険に入るかどうかはお客さまが決めることなので、僕の仕事は有用な情報をお伝えすることだけです。

 でも、僕が街中で声をかけても、普通の人は保険の話なんて聞いてはくれません。だから、会うまででいいので、◯◯さんの力を貸していただきたいんです」

自分の気持ちに嘘はないか?

 このようにお願いをすると、多くのお客さまは「なんとか力になってあげたい」と思ってくださいました。

 もちろん、そのためには、それまでにお客さまとの信頼関係を築いておくことが欠かせません。「この営業マンは、保険を売りつけようとしている」などと、わずかでも疑念を持たれたりすればアウト(そもそも、そんなことでは、その方から契約をお預かりすることはできません)。お客さまの人生に本気で寄り添うことができなければ、お客さまが本気で信頼してくださることはありません。

 そして、自分が「保険というサービスに助けられた」という実体験も嘘偽りなく伝えていました。僕は、両親の事業が破綻したため、大学を退学せざるを得ない状況に追い込まれたのですが、そのとき、祖母が保険を解約して学費を捻出してくれたことがあったのです。そんなエピソードもすべて自己開示していました。

 そのうえで、率直に「お願い」をすれば、多くの方は力を貸してくださるのです。だから、私は「お願い」をするときには、「図々しく、堂々と、正直に」を鉄則にするのが正しいと思っているのです。

 小手先のテクニックに頼ろうとするのは、自分の気持ちに嘘があるから。

 自分の気持ちに嘘がなければ、「図々しく、堂々と、正直に」お願いすることができるはず。しかも、嘘がないからこそ、やましさがないからこそ、そこには「愛嬌」のようなものが生まれます。

 この「愛嬌」が大切です。「愛嬌」は意識的に生み出すことはできません。曇りない気持ちになることで、自然に生まれるものです。そして、「愛嬌のある図々しさ」があれば、きっと、あなたの思いは相手に伝わります。そして、あなたのために力を貸してくださるに違いないのです。

(著者・金沢景敏さんの思考法を詳しく知りたい方は『超★営業思考』をご一読ください)