ロボットやAIに
「仕事を奪われる」人の特徴

シーマンズ教授Robert Seamans(ロバート・シーマンズ)
ニューヨーク大学スターン経営大学院准教授(経営・組織論)。同校「経営の未来センター」所長も務める。ゲーム理論や企業戦略、テクノロジーの授業を担当。2015~16年にかけて、2期目のオバマ政権下で、大統領経済諮問委員会(CEA)上級エコノミストとして政権入り。テクノロジーやイノベーション、起業などに関する研究や政策助言を行った。企業戦略としてのテクノロジー活用をはじめ、AIやロボットなど、先進テクノロジーが経済に及ぼす影響を研究している。 Photo Courtesy of NYU Stern School of Business

シーマンズ 少し言い方を変えて、あなたの質問に答えると、「変化」に逆らう人々が、AIに仕事を奪われるということです。

 職種が何であろうと、AIがホワイトカラーの仕事を変容させることは確かです。場合によっては、ものすごい速さで変化が訪れるかもしれませんし、ゆっくりとした変化かもしれません。

 いずれにせよ、自分の仕事が確実に変わっていくという認識が必要です。そして、AIを活用すべく、新しいスキルの習得に励むことが大切です。

 ホワイトカラー層の中には今後、失業する人も出てくる可能性があります。しかし、それは、求められる新しいスキルの習得を拒んだり、テックを使って自分の仕事の能力を高めることに背を向けたり、という姿勢が招いた結果であることが大半だと予想されます。 

 自分の仕事が変わっていくことに抵抗し、「変化」に逆らう人々が、AIに仕事を奪われるのです。

――押し寄せる自動化やAI化の波の中でサバイバルするだけでなく、そうした波に乗ってバリバリと活躍するために、もっとも重要なことは何でしょう?

シーマンズ 「オープンマインド」でいることです。

 私たちは「変化」の時代に生きているのですから。否が応でも、世の中は変化しているのです。だからこそ、まず、変化を認識することです。そして、将来訪れる変化を常に意識しながら、積極的に仕事に取り組むことが大切です。

 そうすれば、その職種でサバイバルし、活躍し続けるのに、どのようなスキルが必要になるかが見えてきます。職種によっては、多くの研修を受けなければならなくなる場合もあるでしょう。

 例えば、米経営大学院の中には、アバターなどを活用した3D型のオンライン授業を始めているところもあります。あと5年もたてば、おそらく多くの授業がそうなるでしょう。私も準備しなければなりません。

――米国の税制は企業の「自動化」を促すような仕組みになっている、と指摘する米研究者もいます(注:マサチューセッツ工科大学のエコノミスト、ダロン・アセモグル教授)。ソフトウエアや機器など、設備投資に対する平均課税率は2000年以降、引き下げられてきましたが、トランプ前大統領の減税政策で5%以下にまで下がったといいます。一方、労働者のお給料や賃金などへの支払いには平均25%が課され、福利厚生や諸手当などの支払いに対する「付加給付税」を含めると、35%にハネ上がるそうです。

 つまり、「自動化」に100ドル投資した場合は5ドル以下の税金しか課されませんが、人を雇って100ドル支払うと、25~35ドルの税金がかかる、ということです。仮に自動化が生産性向上につながらなくても、税制という「隠れインセンティブ」が働き、企業は利益を求めて、人間の雇用より自動化を選びかねないという指摘もあります(注:アセモグル教授の主張)。

シーマンズ いい点を突いていますね。米国の税制において、「労働」には「資本」よりはるかに高い税率が課されます。資本とは、ソフトウエアやAI、設備や建造物などの「物的資本」を指します。

 私は税制の専門家ではないため、この点について多くを語るつもりはありません。しかし、例えば、ロボットやAIが雇用を奪うのではないかという懸念から、企業が人間の労働を自動化した場合に「ロボット税」を課すべきだという考え方は、間違っていると思います。

 労働者への支払いに対する課税が重すぎると思うのであれば、労働者への支払いに対する税率を引き下げ、資本への投資に課す税率を引き上げるなど、税率を調整すればいいだけの話です。ロボットやAIなどのテクノロジーに対し、特定の税率を定めるべきではないと考えます。