(1)確定拠出年金は
期待リターンの高いもので運用すべし

 まずひとつ目はできるだけ期待リターンの高いもので運用すべきだということである。具体的に言えば、確定拠出年金での運用は預金よりも投資信託を優先した方が良いという話だ。なぜそうなのかを考えてみよう。ここでキーワードとなるのが「アセット・ロケーション」という言葉だ。

 間違えてはいけないのは、似たような言葉だが「アセット・アロケーション」とは意味が異なることである。

「アセット・アロケーション」というのは資産配分のことである。仮に今、手元にお金が100万円あるとしよう。例えばその100万円の半分の50万円で株式投資信託を買い付け、残りの50万円を定期預金に預ける、これが「アセット・アロケーション」だ。

 一方、「アセット・ロケーション」というのは資産配分のことではなく、「どの制度でどの金融商品を利用するか」ということである。言葉だけでは抽象的なので具体的な例で見てみよう。

 例えば前述のように株式投信と定期預金に50万円ずつ配分するのが「アセット・アロケーション」だが、その際仮に50万円までは運用利益が非課税となる制度が利用できるとした場合、どちらを非課税制度の利用に充てるか?というのが「アセット・ロケーション」である。下図を見てみよう。

iDeCo対象者が拡大!確定拠出年金で絶対間違えてはいけない2つのこと筆者作成

 ケース1は株式投信を課税にし、確定拠出年金では預金を利用するという場合である。以下の2点を仮定して考えてみよう。

・100万円の資産を株式投信と定期預金に50万円ずつ配分
・預金金利を0.1%、投資信託の運用利回りが年3.0%

 預金金利は非課税のままだから0.1%であるものの、株式投信は約20%の税金が引かれるため、手取り利回りは2.4%となる、両方を合計して2で割るとポートフォリオ全体の収益は1.25%だ。

 ここで、ケース2を見てほしい。非課税になるのは「投信」だ。そのため預金は20%の税金を引かれて0.08%、株式投信は非課税なので3.0%となり、同様に合計して2で割ると全体収益は1.54%となる。あきらかにケース2の方が運用成績は良くなる。

 この場合、大事なことはケース1でも2でも、アセット・アロケーション(資産配分)は変わらないので、どちらもリスクは同じということだ。すなわち、どのように制度を利用するかによって、リスクは同じでありながらリターンを高めることができるということなのである。

 こう言うと、「でも値下がりすることもあるじゃないか」という人がいるだろう。それはその通りである。

 でも値下がりすることに対して自分としてはそんなリスクは一切取りたくないのであれば、課税であろうが非課税であろうが、投資信託は買わずに全部預金にすればいい。もちろんその場合、リターンは見込めない。

 アセット・ロケーションの例に話を戻すと、要点は預金と投信のどちらに非課税制度である確定拠出年金を利用すべきかということだ。これは間違いなく、期待リターンの高い株式投信を確定拠出年金で利用すべきなのだ。

 例えば、家電量販店で大きなセールがあって、全商品50%割引というようなビッグセールがあったとしたら、その時に乾電池1個だけを買って帰る人はいないだろう。普段買いたいと思っていた高額商品をこの機会に買うはずである。何を買っても50%割引なのだから当然そうするだろう。確定拠出年金はいわば、「なんでも非課税にしてあげます」というセールみたいなもの。だから、利益の見込める投資信託を選ぶべきなのは当然だと言える。