(2)確定拠出年金だけでの分散投資に
あまり意味はない

 同じ確定拠出年金でも、iDeCoではなく企業型DCの場合は、導入の際に金融機関から講師がやってきて投資教育セミナーをやるのが普通だ。そんな時、どの講師も判で押したように言うのが「分散投資をしましょう」ということだ。

 これは決して間違ってはいない。投資で最も大切なことの一つが分散投資であるからだ。ところが確定拠出年金の場合は、必ずしも分散投資が必要かというと、そうでもない。

 ここで、冒頭に挙げた確定拠出年金の運用における特徴を思い出してほしい。

(2)の「運用できる金額には上限がある」という点である。例えばサラリーマンがiDeCoをやろうと思ったら、最大限多くても月額2万3000円が限度である。一方、企業型DCの場合は掛金を決めるのは会社だ。そのため、少ないと数千円ということもある。

 つまり、多くの人にとっては、確定拠出年金で運用している資金が自分の持っている金融資産全てというわけではないのだ。

 資産運用において分散投資が大事だというのは、その通りなのだが、それはあくまでも自分の資産全体での話である。

 例えば確定拠出年金以外では全く投資をしていないのであれば、確定拠出年金ではなく、全て投資信託にすべきだろうし、逆に預金を全く持っていないという人であれば(そんな人はあまりいないだろうが)、確定拠出年金を全額預金にするということも考えられなくはない。

 要するに、確定拠出年金の運用資産の中だけで分散投資をしていてもあまり意味はないということなのだ。

 実際に筆者は会社員時代、2002年から2012年まで企業型確定拠出年金で積み立てをしていたが、その内容は「新興国株式」一本であった。

 この理由は、当時の自分が持っている金融資産は日本もしくは先進国の株式や投資信託ばかりであり、新興国の株式への投資は全くしていなかったからだ。自分の金融資産トータルで考えれば、確定拠出年金の残高が占める割合は低く、全部を新興国株式に投資しても問題ないぐらいの金額であった。だから期待リターンの高い新興国を選択したに過ぎない。

 このように、制度の特徴を考えてみると普通の投資と確定拠出年金における投資は、やや異なる部分があることに注意が必要だ。

 もちろん投資はあくまでも自分の判断でおこなうものであるから、筆者が述べたようなことが必ずしも正しいわけではないが、基本としては知っておいても良いだろう。

(経済コラムニスト 大江英樹)