うまい話の裏には陰謀があると考えるタイプの人たち

 3つ目が、右上の「ニュー資本主義」。長期的な持続可能性(サステナビリティ)の観点から、未来の経営リスクを感じ取った企業や機関投資家は、オールド資本主義からニュー資本主義へと経済認識を転換してきている。代表的なキーワードは「ESG」だ。そして、環境・社会を重視した経営は、競争力を高め、企業価値を長期的に向上していけると理解されるようになった。最近では政府からも「経済と環境の好循環」という政策が出てくるようになった。

 4つ目が、右下の「陰謀論」。うまい話の裏には陰謀があると考えるタイプの人たちだ。この次元の思想の持ち主は、特にニュー資本主義のように、経済と環境が好循環するというような綺麗事を聞くと、誰かの陰謀ではないかと勘ぐりたくなる。企業が環境・社会への影響を積極的に考慮することは、利益を生むのかもしれないが、結局それは誰か他の人の利益であって、自分たちの利益はむしろ蝕まれると考えていたりする。

 これら4つのタイプの人たちは、水平のラインを境に上下の次元で対立しやすい。つまり、環境・社会への影響考慮に賛成か、反対かという意見衝突だ。歴史的には、オールド資本主義と脱資本主義の衝突という構図がはっきりとあった。オールド資本主義側にいたのはニュー資本主義に移行する前のグローバル企業と機関投資家で、環境問題に対処することは経営コストだとみなしていた。

 一方、脱資本主義側にいたのが、環境NGO、農家、労働者だ。1999年にWTO(世界貿易機関)閣僚会議を巡ってNGOが道路を封鎖した「シアトル暴動」の頃は、ちょうど両者が激しく対立していた。この頃は、資本主義vs.反資本主義の時代だった。

 だが最近、経済認識の対立構造は複雑化している。まず、その変化の一端をみていこう。