かつての脱資本主義陣営が大きく分裂

 この事件は、かつての脱資本主義陣営が大きく分裂していることを意味している。かつて畜産農家と環境NGOは、一緒にグローバル企業と対峙する存在で、仲間同士だった。しかし、今では畜産農家が環境規制の強化に反発し、環境NGOと対立するまでになった。

 他の国でも同様の事象が起きている。例えば2016年のアメリカ大統領選挙では、炭鉱労働者と環境NGOが反目し合った。当時の民主党バラク・オバマ政権では、気候変動や大気汚染への対策として、石炭火力発電を減少させる政策が打ち出されていた。

 それに怒ったのが、ウエストバージニア州やペンシルベニア州の炭鉱労働者たちだった。オランダの畜産農家と同様に、なぜ自分たちが悪者扱いされなければいけないのかと環境政策を敵視した。そしてこの大統領選挙では、最終的に彼らからの支持を獲得した共和党ドナルド・トランプ候補が勝利を収めた。

 2020年のアメリカ大統領選挙でも、労働組合側はなかなか一枚岩になれなかった。公務員労組の多くは、民主党ジョー・バイデン候補が掲げたグリーン・ニューディール政策を支持したが、すぐには賛成に回れない労働組合も少なくなかった。

 例えば、米国炭鉱労働組合は、石炭労働者の生活が危ぶまれると主張し、グリーン・ニューディール政策に反対の姿勢を表明した。民主党支持派の多いカリフォルニア州では、人口密集地での油田開発を禁止する州法案が提出されたが、電気工、鉄工、パイプ工、ボイラー工、建設労働者が加入しているカリフォルニア州建設労働者協議会が反対したため、廃案となった。

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