データサイエンティストが説く「勝てる経営者」の資質、株主優先はもう古い写真はイメージです Photo:PIXTA

データサイエンティストとして日・米・欧で実績を上げてきた筆者は最近、奇妙な出来事に出くわした。企業のトップを務める知人たちから、別々の会議や会食の場で、一様に「経営者に求められる資質が変わり始めている」と熱弁されたのだ。彼・彼女らによると、かつて投資家が出資先を決める際、判断基準となるポイントは収益性だったが、今では異なる点が重視されているという。知人の声や筆者の実体験から導き出した、今の時代に求められる「勝てる経営者」の資質を解説する。(マッキンゼー・アンド・カンパニー パートナー 工藤卓哉)

企業トップの友人・知人が
一様に話した「時代の変化」

 先日、あるベンチャー企業のトップとディスカッションしていたときのことだ。

 話が投資ラウンドや事業ステージに及んだとき、彼はおもむろに「ベンチャーキャピタル(高い成長率が期待できる企業に投資するファンド)の投資基準が変わってきたように感じる」と切り出した。

 興味を引かれ、その理由を尋ねると、彼は「あくまでベンチャー経営者の肌感覚」だと前置きした上で次のような話を聞かせてくれた。

 いわく、世界が新型コロナウイルスに翻弄される前は、彼がベンチャーキャピタリストに尋ねられることといえば、まるで判で押したように、ビジネスモデルや成長戦略、TSR(株主総利回り)やPER(株価収益率)についてばかりだった。

 だが、ここ数年で状況が様変わりし、「ESG経営についてあなた自身はどう捉えているのか」と、かなり詳細に踏み込んだ見解を求められるようになっているという。

 ESGとはむろん、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を組み合わせた言葉を指す。

 ベンチャー経営者からこの話を聞いたとき、私は時代の変化を感じるとともに、不思議な偶然に驚いた。この数カ月のうちに、他の友人・知人からも、何度もこれに類する話を耳にしていたからだ。

 例えば、以前から親しくお付き合いしているKDDIの代表取締役社長・高橋誠氏からは、次のような話を伺った。