田原総一朗氏が喫茶店のマスターに!世間体が気になる…誰にも相談できない…「望まない孤独」を若者たちが語り合うPhoto by Hasegawa Koukou

若者の自殺者が増えている。コロナ禍で子どもの自殺が2020年過去最多となり、2021年も過去2番目に多い――。早稲田の昔ながらの喫茶店にて、定期的に「田原カフェ」という対話会が催されている。ジャーナリストの田原総一朗氏が「一日マスター」となり、20代を中心とした約20人の若者たち、そして、その回のテーマに応じて招いたゲストらと、対話を行うイベントだ。ゆるい「朝ナマ」のようでもあるが、重きを置いているのは議論ではなく、あくまで「対話」である。その場にいる参加者全員がある意味、パネリストであり、誰でも自由に発言できる。忖度のない若者ならではの意見や悩みも自由に飛び交う。今回、慶應義塾大学在学中にNPO法人「あなたのいばしょ」を設立、数々のメディアにも登場する大空幸星氏をゲストに迎えた田原カフェの第7回、「望まない孤独」を取材した。(構成・文/ライター 奥田由意)

親や友人、先生に相談できない…
増加する若者の自殺

大空氏大空幸星(おおぞら・こうき)
NPO法人「あなたのいばしょ」理事長。1998年愛媛県松山市生まれ。孤独・自殺対策をテーマに活動。「信頼できる人に確実にアクセスできる社会の実現」と「望まない孤独の根絶」を目的として、慶應義塾大学総合政策学部在学中にNPO法人「あなたのいばしょ」を設立。24時間365日無料で利用できるチャット相談窓口を運営。内閣官房「孤独・孤立の実態把握に関する研究会」構成員、内閣官房「孤独・孤立対策担当室ホームページ企画委員会」委員など。著書に『望まない孤独』(扶桑社新書)、『「死んでもいいけど、死んじゃだめ」と僕が言い続ける理由』(河出書房新社)。 Photo by H. K.

 早稲田大学前・早稲田キャンパスの南門の目と鼻の先に、「ぷらんたん」という昔ながらの喫茶店がある。店名の由来は、フランス語の「春」(printemps)だ。1950(昭和25)年のオープン以来、「学生街の喫茶店」として、学生や地元の人に愛されてきた。

 この老舗の喫茶店で、早大の講義「たくましい知性を鍛える(大隈塾)」の受講生だった学生やOBらが中心となり、定期的に「田原カフェ」という催しを企画している。

 大隈塾の塾頭でもあるジャーナリストの田原総一朗氏が「一日マスター」となり、20代を中心とした若者たち、そして、その回のテーマに応じて招いたゲストらと、対話を行うイベントだ(詳細は2022年8月12日配信『田原総一朗氏が喫茶店のマスターに!』参照)。

 ルールはおもに2つ。(1)「対話」を意識し、「意見の違い」を楽しむこと。反論はOKだが「否定」はしない。(2)心理的安全性を担保すること。手を挙げてから発言し、発言に対しては拍手をする。発言にタブーはない。

 8月26日に開催された第7回のテーマは「望まない孤独」

 若者の自殺者が増えている。コロナ禍で子どもの自殺が2020年に過去最多となり、2021年も過去2番目に多い。今回のゲストであり、慶應義塾大学在学中にNPO法人「あなたのいばしょ」を設立し、無料・匿名のチャット相談窓口「あなたのいばしょ」を運営する大空幸星氏は、同タイトルの著書を持つ。

 大空氏によれば、「ソロキャンプ」「ソロ活」「ひとり焼き肉」など、自ら進んで一人で行動することとは異なり、「親がいても子どもたちが頼れない」「学校の先生や友だちに相談できない」「相談や頼ることが恥ずかしいと思わされている」「頼らなければならない状況なのに自己責任に帰す風潮がある」というように、「相談したくてもできない」「頼りたくても頼れない」状態をこう呼んでいるという。英語では前者は「solitude」であり、後者は「loneliness」だ。

 日本人は世間体を気にする。家制度の流れで、個人の貧困や悩みなどの問題は家庭内で解決すべきものと考え、家の中に閉じ込めようとする風潮があるという話が出ると、「僕が子どもの頃は、家や学校でいやなことがあると、近所の家へ行って話を聞いてもらうなど、地域社会が機能していた。でもそのつながりが絶たれて久しい」と田原氏。

 若者の自殺の増加を受け、国は「孤独・孤立対策担当大臣」を設置し(参考記事:2021年4月1日配信「日本が任命2カ国目、「孤独・孤立担当大臣」って何?という人に知ってほしいこと」)、内閣官房には孤独対策委員が40人いる。イギリスには2018年世界初の「孤独対策大臣」が誕生しているが、政府でこの規模の対策をしているのは世界初だという。

 しかし、行政の窓口や電話相談というのは、若者が頼りやすい場ではない。