今いる場所以外にも「いばしょ」はある
孤独を感じた人に「つながり」を処方

ディスカッションPhoto by H.K.

 途中、5つほどのグループに別かれて、ディスカッションが行われた。

 あるグループでは、教員の女性が「自殺や無差別殺人のニュースを聞くと、それ以外に選択肢があることを示せなかったことに、無力感を感じる」と述べると、別の女子学生は「教育実習で教師はあまりにも忙しすぎると感じた」と応じた。

 男子学生は「何でも学校で解決すべきだと思われている。学校に求められる機能が多元的すぎるのでは」と問う。「学校の負担が大きいのは事実だが、教育以外の豊かな機能をなくしてしまうのはもったいないとも思う」と再び教員。

今所属しているところ以外にも、つながれる場所や方法が必ずあるということを、学生時代に知りたかった」

「助けを求める場所は家か学校しかないと思わされているが、たとえば学校内のパソコン室や図書室のように、普段の生活のしくみの外にいる人たちに助けを求めることができる。そういうことを知らない子もいる」

「行政の人による、『学校以外の場所もあるんだよ』ということを教える出張授業があったらいいのでは」

対話Photo by H.K.

「部活が学校に取り込まれず、地域にあれば、逃げ場になりうる」

「いろいろな取り組みをしても、情報を得られる人たちにしか届いていない。本当に救うべき層に届いていない

 どのグループも活発に発言が飛び交い、短い時間でもディスカッションの時間は充実していたようだった。

 一方で、新たな論点やトピックも出てきた。たとえば、「ツイッターの自殺願望アカウントでつながっている人には共感してもらえるが、行政などの公的な相談窓口というのは、子どもにとっては『大人』の側。共感されることが難しそうな大人の側に、あえてかじを切ろうと思えるか」という意見が出た。

「孤独をなぜ感じるか?」という話題になると、「古来、狩りをしていた人間が集団から離れることは、死を意味する。そのため、つながりを絶たれると、生理的欲求として孤独を感じ、つながりを求めるように、人はできている」と大空氏。

 孤独は短い期間であれば重症化しない。だからその前に防ぐのがベスト。イギリスでは、孤独を感じた人が医者に診てもらうと、医者は、地域に属する「リンクワーカー」につなぎ、地域に属するリンクワーカーがその人の相談に乗るというように、「つながり」が処方される。日本でも同様のしくみをつくれないか、議論が始まっていると紹介した。