債務減免を含む事業再生――。ゼロゼロ融資で膨れ上がった債務の負担を軽減するため、政府は「令和の徳政令」を実行しようとしている。もちろん全ての企業が債務減免されるわけではない。倒産を回避して生き残らせる企業の“選別”が始まろうとしている。徳政令の恩恵にあずかれる企業と、そうではない企業の境目は?特集『選別開始!倒産危険度ランキング2022』(全20回以上)の#2では、倒産回避の最後の秘策ともいえる徳政令の行方に迫る。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
総合経済対策に明記された「債務減免」
中小企業支援の「令和の徳政令」が始まる
債務減免を含めた事業再生・再チャレンジを支援する――。
10月28日に政府が閣議決定した物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策。エネルギー価格の高騰を受け、1家庭当たり約4.5万円となる電気やガス、ガソリン代の負担軽減策に話題が集まる中、中小企業の支援策に絡みひっそりと記されたこんな一文がひそかな注目を集めている。
債務減免とはすなわち借金の棒引き。「令和の徳政令」が実行されようとしているのだ。
新型コロナウイルスの感染拡大で、多くの企業の経営環境が悪化したにもかかわらず、2021年の企業の倒産件数は歴史的な低水準で推移した。これは実質無利子・無担保で融資を受けられるゼロゼロ融資をはじめとする、手厚い支援があったからだ。
自治体が最初の3年間の利子を負担し、元本は信用保証協会が保証してくれるゼロゼロ融資は、民間の金融機関にとって焦げ付きリスクなしで収入を得られるおいしいビジネスだった。だから、金融機関はカネを貸しまくった。
ゼロゼロ融資の申請基準を満たさない企業の業績を改ざんして不正融資をしたとして、9月30日に東海財務局から行政処分を受けた中日信用金庫のような悪質な例もある。
これまでに実行されたゼロゼロ融資は約244万件、総額で約42兆円にまで達した。このうち約23兆円が民間分だ。
一時的な企業の延命につながったゼロゼロ融資にも弊害があった。
東京商工リサーチが10月に約5200社を対象に実施した調査によれば、中小企業の33.0%、実に3社に1社が「過剰債務」と回答している。つまり、カネを借り過ぎたのだ。
そしてゼロゼロ融資の返済が一部の企業で始まり、23年7月~24年4月には民間のゼロゼロ融資の返済開始のピークを迎えようとしている。
そんな中、不穏な予兆が出始めている。帝国データバンクによれば、22年4~9月に倒産した企業のうち、ゼロゼロ融資など「コロナ融資後」の倒産件数は202件で、前年同期の約2.6倍に上った。
返済が本格化する来年以降、カネを借り過ぎて首が回らない企業の倒産が増加することは目に見えている。統一地方選挙が実施される23年に、大倒産時代の到来を食い止める最後の“秘策”が、債務減免なのだ。
令和の徳政令で救われるのはどんな企業か。そのヒントが、総合経済対策に債務減免などを盛り込むよう提言した自由民主党金融調査会が10月13日にまとめた緊急決議に隠されている。
決議をひもといた上でキーパーソンに取材をすると、債務減免のスキームが浮かび上がってきた。幾つかの業種は重点的に債務減免を受けられそうだ。そして、債務減免を受けられるかどうかは「ある型」にはまるか否かでチェックされそうで、企業の取捨選択が23年春までに始まる可能性が出てきた。