ゼロゼロ融資の返済本格化に伴う倒産急増が懸念される中、政府が10月28日に閣議決定した総合経済対策の目玉の一つは、ゼロゼロ融資を受けたものの経営不振が続き、過剰債務を抱える事業者の「債務減免」だ。過剰債務を買い取って負担を軽くし、新規の資金を入れて事業再構築や事業転換を支援しようというものだが、競争力をなくしたゾンビ企業を延命させる「令和の徳政令」との批判もある。来春の統一地方選挙対策のにおいもする中、日本経済の立て直しにつながるのか。特集『選別開始!倒産危険度ランキング2022』(全20回以上)の#3では、債務減免を提言した自民党金融調査会の片山さつき会長に狙いと課題を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部特任編集委員 西井泰之)
コロナ禍や予期せぬウクライナ問題
経営悪化は事業者の責任ではない
――過剰債務を抱えた企業を対象にした債務減免などによる事業再生支援策の強化が、総合経済対策に盛り込まれました。中小・零細企業の経営の現状や今後をどう考えていますか。
これまでコロナ禍にもかかわらず、倒産件数はかつてない低い水準で抑えられてきました。ゼロゼロ融資などの対策の効果があったことは間違いありませんが、今後は、爆発的な急増はないにしても倒産が増えるという問題意識は持っています。
もともと日本政策金融公庫が始めたゼロゼロ融資を民間金融機関にもやらせたのは、地方の信用金庫の理事長から窮状を訴えられ、われわれ自民党が言い出したものです。
信金の取引先である零細な旅館や土産物店などは、公庫からの融資をなかなか受けられない。受けられたとしても、小さな県では公庫の窓口は一つしかない。そこに経営が苦しくなった中小・零細企業がどっと駆け込んだら、対応ができないと考えたからです。
中小・零細企業は、生産性の低さや事業承継などの構造問題がもともとあったところに、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けました。さらにロシアのウクライナ侵攻で原材料代やエネルギー価格が上がり、企業によっては、サプライチェーンが途絶して部材が入らない事態にもなっています。
そして売り上げ減や収益悪化は、緊急事態宣言に伴う営業時間短縮やさまざまな自粛要請が原因。ウクライナ問題なども、経営者の責任の範囲では負えないリスクです。今の状況を事業者の責任にすることはできません。
約42兆円に達するゼロゼロ融資の返済本格化を前に、債務減免という中小企業救済の奥の手を打ち出した政府。令和の徳政令の恩恵を受けられるのはどんな企業なのか。次ページでは、片山氏に債務減免の狙いや課題を語ってもらった。片山氏は債務減免の規模について、「2兆~3兆円」との試算を明かした一方で、「改善しないゾンビ企業を支援しても効果はない」とも断じた。