選別開始!倒産危険度ランキング2022#9Photo:mfto/gettyimages

コロナ禍の影響がボディーブローのように残る小売業界に、値上げラッシュによる買い控え要因が生じ、新たな苦境が浮かび上がる。総合ランキングとは別に、市場環境が激変した16業界について、それぞれ倒産危険度ランキングを作成した。特集『選別開始!倒産危険度ランキング2022』(全20回以上)の#9では、小売業界を取り上げる。流通大手イオンが5位にランクインするなど、20社が“危険水域”に入った。本質的な構造転換、経営改革が未遂に終われば、小売業界の未来は暗いままだ。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

10月に6699品目の値上げラッシュ
イオンはPB価格据え置き宣言

「われわれが出荷価格を値上げしても、価格を据え置くスーパーマーケットは少なくない」

 こう語るのは、ある大手食品メーカーの社長だ。

 加速する円安とロシアによるウクライナ侵攻が原材料高を引き起こし、食品や日用品などの値上げが相次いでいる。帝国データバンクによれば、2022年9月までの食品の値上げで、1世帯当たり年間7万円程度の負担増があるという。

 また同社の調査によれば、上場する主な飲料・食品メーカー105社が10月に値上げした食品は6699品目となり、値上げ品目数が年内最多だった8月の2.6倍に。値上げ幅の平均は14%で、記録的な“値上げラッシュ”となっている。

 それでも、冒頭の食品メーカー社長の言葉が象徴するように、メーカーが値上げをしても、客離れを恐れる小売店が価格転嫁を控える動きは少なくない。それは経営体力に乏しい中小企業はもちろんのこと、大企業も例外ではない。

「価格維持に努めます」――。流通の巨人・イオンは、プライベートブランド(PB)「トップバリュ」の価格を、3品目を除いた約5000品目で据え置く方針を22年6月に示した。低価格を維持すれば、客離れのリスクを抑えられる。しかし、値上げをせずにコストを抱え込む“痩せ我慢”を続けることは、企業の経営をむしばんでいく。

 ダイヤモンド編集部が小売関連業界の倒産危険度を検証したところ、20社が“危険水域”と判定された。そしてイオンはワースト5位にランクインした。小売業の“倒産予備軍”はどの企業か。

 次ページでは、中堅から大手、地方企業まで20社がランク入りした小売関連業界の倒産危険度ランキングを企業の実名とともにお届けする。