資生堂Photo:SOPA Images/gettyimages

新型コロナウイルスの感染拡大から3年弱が経過した今も、日用品・化粧品業界の二大巨頭である資生堂と花王の株価は元気がないままだ。両社が直面する課題と、株式市場におけるリアルな評価を、アナリストの視点で分析する。(三菱UFJモルガン・スタンレー証券 シニアアナリスト 佐藤和佳子)

当初の「楽観論」から一転
資生堂はV字回復ならず

 新型コロナウイルス感染拡大が始まってから、早くも3年弱がたとうとしている。2020年のコロナ禍当初は、日用品・化粧品業界でも、短期で感染拡大の終止符が打たれるとの楽観論が先行していた。

 しばらくは「マスク生活は短期間であるし、外国人観光客も戻ってくるだろう」との見方が強く、それが株式市場にも反映された。化粧品大手の資生堂でも、業績が低迷する中、株価がコロナ前の水準より上昇する場面があった。

 だが結局、日用品・化粧品業界では、外出減少とマスク生活による内需の減退や、インバウンド消費の消失という外部環境の変化は避けられなかった。資生堂のみならず、多くの日用品・化粧品メーカーが業績に大打撃を受けた。

 そうした状況下で、資生堂が21年2月に発表した中期経営計画は市場に評価された。中でも、「スキンビューティー領域の強化」「基盤再構築のための構造改革」の説明は納得感のあるものだった。

 また、「TSUBAKI」「UNO」などの日用品を含むパーソナルケア事業の売却、「ドルチェ&ガッバーナ」のライセンス解消、米メイクアップブランドの売却を矢継ぎ早に発表したこともスピード感があり、今後の業績のV字回復を予感させるのに十分であった。

 だが、ふたを開けてみれば、足元の22年1~6月期の連結決算では、資生堂の売上高は前年同期比0.4%減の4934億円となっている。営業利益から構造改革に伴う損失などを除いた「コア営業利益」も、同23.9%減の175億円に沈んでいる。