変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、6月29日発売)は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)で、IGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏だ。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていく時代。これからは、組織に依存するのではなく、一人ひとりが自立(自律)した真のプロフェッショナルにならざるを得ない。同書から抜粋してお届けしている本連載の特別編。「結果が出せない平成上司」と「結果を出し続ける令和上司」の決定的な違いとは?の第1回をお届けする。

「結果が出せない平成上司」と「結果を出し続ける令和上司」の決定的な違いとは?【第1回】Photo: Adobe Stock

グローバル化とデジタル化で環境が大きく変わった

 平成の時代は日本経済の「失われた30年」と言われていますが、この間に世界の競争環境は大きく変わりました。

 かつては米国と日本で世界のGDPの4割程度を占めていましたが、今では中国のGDPは日本の約3倍に拡大し、東南アジア全体のGDPも早晩日本に追いつくと予想されています。グローバル化が進展したことで、世界のいたるところから競合が出現し、経営者を悩ませています。

 また、デジタル化が進展したことで、リアル空間のみならず、バーチャル空間でも競争が繰り広げられることになりました。例えば、中国のSHEINというアパレル企業は物理的な店舗を持っていませんが、米国を中心としたグローバル市場を席巻し、売上高は2兆円を超えていると言われています。

トップダウンでは結果が出ない

 かつて日本には多くの名経営者がいました。それらの経営者は独自の経営理念で社員を鼓舞し、世界的な大企業を築いてきました。

 例えば、パナソニックの創業者の松下幸之助氏が提唱した「水道水のように低価格で良質の商品を大量に供給する」という経営哲学は、水道哲学として世間にも広まりました。産業人の使命は貧乏の克服であり、物資を潤沢に供給することで物価を下げ、消費者の手に容易に行き渡るようにしようという思想は、自身が消費者でもあった従業員にとって共感できる部分が多く、従業員のモチベーションを上げると同時に、彼らの会社に対するエンゲージメントを高めました。

 決まったゴールに最短でたどり着くことが重要だった時代には、トップダウン型の経営者や上司が有効に機能しました。しかし、ゴール自体を設定する能力が問われる今の時代には、こうした平成上司のやり方は残念ながら全く通用しません

ビジョンをみんなで共創する

 これからの時代の令和上司に重要なのは、ビジョンをトップダウンで落とし込むのではなく、チームでビジョンを共創することです。

 特に、世界中の多様なメンバーで構成されるチームを率いていくには、メンバーの関心事を理解した上でビジョンを共創することが重要です。そうすることで、メンバーから多様な考えを引き出して、チームとして結果を出すことができるようになります

アジャイル仕事術』では、ビジョンを共創する方法以外にも、働き方のバージョンアップをするための技術をたくさん紹介しています。

坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。その後、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て、経営共創基盤(IGPI)に入社。現在はシンガポールを拠点として日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、2022年6月29日発売)が初の単著。