気候・風土・歴史・文化を読み解き
地域「らしさ」を前面に

 所有者意識を捨てたうえで、その土地やエリアに根ざした設計に強くこだわることで、地域「らしさ」を体現した長く愛される物件が生まれます。具体的には、生き証人と言われるようなその地に長く住まう人に聞き込みしたり、資料等を丁寧に調査することで、土地ごとの気候・風土・歴史・文化を読み解き、物件のコンセプトや設計・デザインに落とし込みます。この読み解きには植生も含みます。

 例えば、地域にある用水路は住人とどのようにかかわってきたのか、目の前の街道はいつ整備され、どのような人々が何のために歩いていたのか……こうしたことを突き詰めていくことで、屋根の角度や外装の色づかいをどうすべきか、中庭に植える木々は何かといった具体的な仕様やデザインが自ずと見えてくるのです。

 大手のホテルや小売りチェーン等は、全国津々浦々に同じ仕様、同じ色合いの建物を建て、それによって日本の地方都市はどこも似通った景観になってしまいました。そのほうが経済合理性があると信じてきたのでしょう。しかし、地域がナショナルブランドに浸食されると、地元の店はつぶれてしまう。そうして地域が廃れてくると当の大手チェーンは見切り早く撤退してしまい、さらに地域は寂れていくのです。一時的な視点では、将来に渡る持続可能な街つくり、地域興しはできないのです。

 私たちNENGOの企業理念は、「企業活動を通じて『世のため人のため』に貢献する」ことです。こうした価値観を共有できる社内外のスタッフ、取引業者、金融機関等を広く巻き込みながら、50年、100年後も愛される家・街つくりを進めています。次回以降は、「らしさ」を活かした物件やエリアの再生、地域ブランディング、歴史的建造物の継承といった具体的な再生事例を紹介していきます。

●タイトル写真左上:HANEGI+<事業主>明大前コーポラティブハウス建設組合<事業コーディネイター>株式会社トライクコンサルティング、株式会社NENGO<設計・監理>古谷デザイン建築設計事務所<施工>株式会社タック<撮影>山内紀人写真事務所 ●同左下:津田山の家(旧中村邸)<設計>アトリエ・ワン<施工>株式会社NENGO ●同中央:等々力街区計画<プロデュース>守谷光弘+NENGO+一級建築士事務所タステン アトリエ<温熱環境アドバイザー>バウ・フィジック デザイン ラボ<設計・監理>一級建築士事務所 タステン アトリエ<構造設計・監理>OZAn尾崎設計室 一級建築士事務所<撮影>AKIRA NAKAMURA ●同右上:unicoA(ウニコア)/ unicoB(ウニコビ)<事業主>株式会社ヨネヤマ<所在地>神奈川県川崎市川崎区日進町3-4<最寄駅>JR川崎駅東口から徒歩10分<デザイン・プロモーション>オンデザインパートナーズ+秋吉浩気+NOGAN<総合プロデュース・施工>株式会社NENGO ●同右下:プローテ二子玉川<総合プロデュース・施工・管理>株式会社NENGO