『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

高校生からの質問「なぜ、超最新の現代史の教科書がないのか?」への納得の回答Photo: Adobe Stock

[質問]
 読書猿さんはじめまして現在高校一年生です。

 新課程の日本史の教科書を読みましたが、現岸田内閣の数世代前の内閣についてしか取り扱っていませんでした。

 現在自分が生きている時代までの歴史(日本史・世界史)を学びたいと考えているのですが比較的新しめの内容も扱っている現代史の教科書のようなものはありますか?

今はまだ、答えを作り上げている途中です

[読書猿の回答]
「現在自分が生きている時代までの歴史」というニーズはあるので、それっぽい一般書はいくつか出ていますがオススメできるものはありません。これは著者の力量というより、歴史として記述するためには「距離」をおいて見ることが必要だからだと思います。

 私達は渦中にあるとき、何が起こっているのかさえ、なかなか理解することができません。ある出来事が、どんな意味や意義を持つものであったのかは、さらに時間がたってからでないと評価することが難しい。

 私達が「歴史」と呼んでいるものは、単なる過去の出来事の寄せ集めではありません。毎日起こる無数の出来事の中から、重要なものを選び出し、一連のものとして結びつけ、記述したものです。出来事の選択や結びつけには、当然ながら「何が重要なのか」「どの観点からみて重要か」といった評価や解釈が不可欠です。

 重要なことを付け加えるならば、毎日起こる出来事の中から何かを選び出し意味づけ何らかの対応をすることは、我々が日々続けていること(実践)でもあります。

 現在の出来事の意味は、それがどのような未来につながったかで測られますが、その未来は我々の実践の積み重ねによって作られるのです。

 現在は「答え合わせ」の時間ではなく、いくつもある可能性に向かって答えを作り上げている時間です。これが私達がまともな「現在の歴史」を持ち得ない理由(のひとつ)です。