共和党支持者の中には、「アメリカが民主党に乗っ取られてしまう」という不安が芽生え、それが、今なおトランプ支持、民主党政権への強い反発となって顕在化してしまっているのだ。
前述したアメリカ人ジャーナリストは語る。
「今年8月、FBI(連邦捜査局)がフロリダ州にあるトランプ邸への強制捜査に踏み切った際には、SNS上で『さあ、弾を込めろ』といった言葉があふれた。『内戦』はあり得ない話ではない」
民主党と共和党の敵対関係が
日本の安全保障に与える影響
皆さんは覚えておられるだろうか。バイデンは、2021年1月20日、大統領就任式で、国民に「団結」を呼びかけた。
「私たちはお互いを敵対する相手ではなく、隣人として見ることができる。意見の不一致が、国の解体につながってはならない」
ところが、今年9月1日、バイデンは、ペンシルベニア州フィラデルフィアで行った演説で、正反対の言葉を並べた。
「(トランプ前大統領とその支持者は)アメリカの根幹を脅かす過激思想の象徴だ」
対するトランプも、その2日後、同じペンシルベニア州で、次のように反論し、集まった支持者から拍手喝采を浴びている。
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「バイデンは悪質で憎悪に満ち、分断を招く演説をした。バイデンこそ国家の敵だ」
友人関係に例えれば、断絶状態も超えた敵対関係である。そこに解決への糸口は見いだせない。2人による大統領選挙が繰り返されれば、分断や断絶がさらに深まるリスクもある。
このことは、将来、もし中国が台湾や尖閣諸島に侵攻した場合、軍を派遣しアメリカ兵の血を流してでも台湾や日本を支援するかどうかなどの議論にも悪影響を与えかねない。
日本の同盟国、アメリカで、これ以上、分断や断絶が進めば、もしものときは日本独自で中国あるいは北朝鮮と対峙(たいじ)しなければならないという覚悟はしておいたほうがよさそうだ。
(政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師 清水克彦)