頑張っているのに成果が出ない。どうすればいいのか、途方にくれる人も少なくないだろう。そんな人におすすめなのが、『1位思考──後発でも圧倒的速さで成長できるシンプルな習慣』。創業9年目で売上300億円にしたアンカー・ジャパンCEOの猿渡歩氏、初の著書だ。猿渡氏は「適度にサボると生産性は上がる」という。27歳入社→33歳アンカーグループ最年少役員→34歳アンカー・ジャパンCEOになった著者が、参入したほぼ全製品カテゴリーでオンラインシェア1位になった秘密は、シンプルな6つの習慣にあった。本書の一部を抜粋しながら急成長の秘密を明らかにしていこう。
とてつもなく難しい
レッドオーシャン市場への挑戦
スマートプロジェクターはアンカーが新規開拓したカテゴリーだが、バッテリー、充電器、イヤホンなどはすべて後発だ。
レッドオーシャン市場であり、すでに強烈なライバルがいた。
まして本書「はじめに」で触れたように、充電関連機器は「Low Passion(消極的な購買姿勢)」「Low Recurring Rate(低いリピート率)」「Low Average Selling Price(低い平均販売価格)」の「3LOW」市場。
この厳しい市場で1位になるのはとてつもなく難しい。
実際、10年前ならバッテリーや充電器をブランドで選ぶ人はかなり少なかっただろう。
アンカーは、実はノートPCの交換用バッテリーからスタートしている。
当時のバッテリーは価格1万円程度の純正品と、1000円程度で品質は不安定、保証もない製品とに、2極化していた。
スマホ普及の波にうまく乗れた理由
そこでアンカーは、3000円程度で保証付きの良品を出せば売れると考えた。
その後、すぐにスマホが発売されたので、スマホのモバイルバッテリーに注力した。
スマホ市場が伸びれば、モバイルバッテリー市場も伸びる。
アンカーは、eコマース市場の伸びや環境変化、スマホ普及の波にうまく乗れた。
スタートアップには「ブルーオーシャン戦略」が必要というが、ブルーオーシャンと思って参入したら実際には「ノーオーシャン」だったというケースは非常に多い。
魚のいない海に船を出してしまうと痛手は大きい。
それなら確実に魚がいるところで釣りを始めたほうが実は負けにくい。
もちろん、釣りの仕方には工夫が必要だが、まったく釣れないこともない。
つまり後発で1位になるには、レッドオーシャンでも差別化できる強みがあるかどうか、それを常にお客様目線でやりきれるかどうかだ。
売上が上がってきた後は、どこまで改善や差別化ができるかの勝負である。
負けやすいゲーム、負けにくいゲーム
ビジネスは継続性がなにより重要だ。
私たちがオンラインでバッテリーだけを売るメーカーだったら、現在の成長はなかった。
実際、オンラインだけでバッテリーを売っているメーカーは数多くあるが、その競争環境は熾烈だ。
そこでアンカーは、量販店や携帯キャリアでも商品を取り扱ってもらえるよう販路を広げ、加えて直営の実店舗であるアンカーストアも立ち上げた。
スタートアップや大手企業が新規事業で最初に考えるのは、短期間で利益を稼げる勝ちやすいゲームをどうつくるかだ。
それは合理的で正しいが、他社が参入してくると負けやすいゲームになる。
自社が勝ちやすいときは、競合も勝ちやすい。
それは中長期では自社が負けやすいということだ。
D2C(Direct to Consumer)企業が一時期かなり増えたが、残念ながらその多くは継続的な事業運営が困難となっている。
そういった企業の多くはODM(Original Design Manufacturing)でとりあえず製品をつくり、影響力の高いインフルエンサーに商品を紹介してもらうなど、プロモーション戦略に力を入れていた。
面倒なことをやって参入障壁を高くする
一方、勝ち残った企業の大半は質の高い製品を開発し、販路拡大などプロモーション以外にも取り組んでいる。
マーケティングの「4P」でいえば、まず重要なのはプロモーション(販促)以外の部分、つまりプロダクト(製品・サービス)とそれに紐づくプライス(価格)、プレイス(販売場所、提供方法)だ。
正直、これまでと違うことをやるのは面倒だ。
だが、自分たちが面倒くさいと感じることは、他社にとっても面倒くさい。
面倒くさいことをやって勝ちきると、他社の参入障壁は高くなる。
個人の場合も、多くの人が面倒くさいと思っている仕事ができるようになると、オンリーワンの人材になれる。
たとえば、特定の業界の専門知識があったり、多くの人が99%の仕上がりで「完了」としてしまう仕事を100%のレベルにまで仕上げたりすることだ。
(本稿は『1位思考』の一部を抜粋・編集したものです)