近年では、社員教育や福利厚生の一環として「flier」を導入する企業も増えている、と井手氏。さらに、動画に親しんでいるZ世代に向けて音声版と動画コンテンツの拡充も行っているという。Z世代は、新たなサービスの展開にも影響を与えているのだ。

『flier』の動画や音声コンテンツは、手が離せないときや、活字とは違った形で書籍に触れたいときに、ご利用いただいています。「『flier』の動画や音声コンテンツは、手が離せないときや、活字とは違った形で書籍に触れたいときに、ご利用いただいています。ただ、サービスの主軸は書籍の要約なので、今後もユーザーがさまざまな形で本の概要に触れて、実際に本を手に取ってもらえるようにサポートしていきます」(フライヤーの井手琢人執行役員)

「Z世代がタイパを好む明確な理由はわかっていません。しかしタイパを求める人々の根底には『時間が惜しい』という共通した感覚があります。大切なのは、時間が惜しいという感覚を持つ人が『時間がないから時間を大切にしたい人』と『待ちたくない、今すぐ楽しみたい人』の2種類に分けられることです。前者は『時短型』、後者は『バラエティ型』といえます。この区別を理解しないと、タイパの本質を見失ってしまいます」

 そう話すのは、青山学院大学経営学部マーケティング学科の久保田進彦教授だ。『時短型』はとにかく忙しく、時間に追われている人々。子育て世代や、働き盛りの世代に多く、必要に迫られて時間効率を高めているという。「時短型は中高年層にも多く、Z世代特有とはいえない」と久保田教授。

「もう一方の『バラエティー型』は、一定の時間内でより多くのモノを消費したり、楽しんだりしたいという層です。たとえば、映画を倍速で見る、音楽はサビだけを聞くなどの方法で時間効率を高めています。時間に追われているのではなく、自分の時間を目一杯楽しみたいのが特徴です。このタイプは学生や若い人、いわゆるZ世代に多い印象ですが、中高年層にもいます。“今”を楽しむ欲張り消費であり、時間に追われる『時短型』とはかなり異なります」

 久保田教授は「現代のタイパ論は、時短型とバラエティー型が同軸で語られているため、混乱が生じている」と話す。

「『タイパ=若い人の消費行動』というイメージが先行していますが、必ずしもそうではありません。『時短型』と『バラエティー型』を区別すれば、“時間があるのにタイパを求める”という、一見矛盾した行動を取る人々も簡単に理解できるはずです」

タイパ志向が
Z世代で顕著な理由

 幅広い世代がタイパ志向となり、時間を惜しむようになった背景には、価値観の変化とデジタル化が深く関わっているという。

「人類の歴史で見れば、我々は太古の昔から合理性や効率性を求めて生きてきました。18世紀前後の第1次産業革命を機に、合理性を求める価値観がさらに加速。21世紀に入ってからは『デジタル化』によって、さらに強化されたといわれています。ネットの普及で効率的な情報収集が可能になりましたし、SNSでは自分にとってメリットのある人とだけつき合う傾向が強まったようです。そうして、さまざまな物事を“合理的なほど良い”とする価値観が広まりました」