内閣支持率が続落する中、岸田文雄首相の「孤立」が深刻化している。頻繁に自民党幹部や派閥領袖らとの面会を繰り返しているが、彼らの真意を見極められず疑心暗鬼が広がっているのだ。唯一、全幅の信頼を置く長男を首相秘書官に抜てきしたものの改善効果は見られず、もはや「聞く力」は周囲の進言に耳を傾けない「聞かない力」へと変貌しつつある。(イトモス研究所所長 小倉健一)
岸田政権も宏池会も
強い危機感に包まれている
「もう、バラバラだよ」。こうため息を漏らすのは、岸田文雄首相が率いる自民党第4派閥「宏池会」(岸田派)の中堅議員だ。
11月10日の派閥会合で事務総長を務める根本匠・衆議院予算委員長は「言動に責任を持ち、高い緊張感を持って一致結束し、岸田政権を支えていかなければならない」とげきを飛ばした。宏池会は、約30年ぶりに首相を出した名門派閥とは思えないほどの危機感に包まれる。
それもそのはず、年初までは高かった内閣支持率は下げ止まらず、不安定な政権運営が続いているのだ。
読売新聞が11月4~6日に実施した全国世論調査で、支持率は内閣発足以降最低の36%(前回10月調査は45%)となり、初めて30%台に落ち込んだ。不支持率は4ポイント増の50%だ(同46%)。また、朝日新聞の調査(11月12、13日)で支持率は37%(同40%)に低下し、不支持率は51%(同50%)。産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)による調査(11月12、13日)でも下落傾向は変わらず、岸田内閣を「支持する」は38.6%、「支持しない」は57.2%となった。
岸田首相は周囲に「今は耐えていくしかない」と漏らしているが、政権への逆風は簡単には収まりそうにない。
10月28日には円安・物価高騰対策を柱とする総合経済対策を閣議決定し、「国民の声を受け止めながら一つ一つ結果を積み上げ、この国の未来に全力を尽くし、国民の信頼を回復する、こうしたことを積み重ねていきたい」と意気込んだ。ところが、FNNなどの調査では、政府の物価高対応を「評価しない」が76.0%に上った。国民に寄り添っているとは受け止められていない現実が首相に突き刺さる。
なぜ岸田首相はここまで四面楚歌になってしまったのか。その理由は、現政権が二つの重職を欠いているからだろう。その深刻な実態をお伝えしたい。