日本電産が小型モーター訴訟で最大顧客に「完敗」の新事実!虎の子商売喪失の張本人は永守会長Photo:Justin Sullivan/gettyimages

昨年、日本電産がある重大な訴訟で「完敗」していたことがダイヤモンド編集部の調べで分かった。同社のハードディスクドライブ(HDD)用モータの最大顧客である米シーゲート・テクノロジーを相手取り、訴訟に踏み切ったが、ひそかに痛恨の黒星を喫していた。特集『日本電産 永守帝国の自壊』(全7回)の#2では、裁判資料と日本電産関係者の証言により、日本電産が訴訟で敗北した「顚末」を明らかにしていこう。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

日本電産がHDD用モーター訴訟で「痛恨の黒星」
相手は競合ではなく上客・米シーゲート

 日本電産の永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)はひとたびけんかすると決め込むと、最後まで徹底抗戦の構えを崩さない。

 10月には、自己株式取得を巡る不適切な処理の疑いについて報じた東洋経済新報社を提訴した。民事訴訟を提起するにとどまらず名誉毀損罪で刑事告訴までしているところに、永守氏の怒り心頭ぶりがうかがえるというものだ。

 ある日本電産関係者は「日本電産は良くも悪くも訴訟慣れをしているので、戦うと決めれば簡単に引き下がることはあり得ない」と打ち明ける。気概と執念でもってやり抜くという永守流哲学は、裁判においても発揮されるのだろう。

 もっとも、日本電産がこれまでに仕掛けた訴訟が連戦連勝なのかといえばそういうわけではない。実は昨年、日本電産の運命を分ける重大訴訟で「完敗」していたことがダイヤモンド編集部の調べで分かった。

 シーゲート知財訴訟――。昨年1月、日本電産はハードディスクドライブ(HDD)向け技術の特許が侵害されたとして、HDD製造大手の米シーゲート・テクノロジーを米デラウェア州連邦地方裁判所に提訴した。(パソコンやゲーム機に搭載される)HDD用モーターをモジュールで収納できる部品「ベースプレート」やデザイン技術など5件の特許について、損害賠償などを求めたものだ。

 日本電産のHDD用モータ(HDD用スピンドルモータ)は世界シェア8割を握るお化け製品である。同社にとってHDD用モータ事業はこれまでの急成長を支えてきた虎の子事業。その稼ぎ頭の訴訟で敗北するのは大きな痛手である。しかも、被告となったシーゲートは日本電産の競合メーカーではなく製品を納めてきた重要顧客。得意先を訴えるなど尋常なことではない。

 日本電産が自信を持って臨んだ知財訴訟で“痛恨の黒星”を喫した背景には何があったのだろうか。

 次ページでは、実質的な完全敗訴に至った「顚末」を裁判資料と日本電産関係者の証言により明らかにしていく。そして、それらの事実が示しているのは、裁判沙汰になった原因が永守氏による経営判断ミスにあるということだった。