EV(電気自動車)シフトに出遅れる日本の自動車産業の中で、独り気を吐いているのが日本電産だ。EV向け「トラクションモーターシステム」で勝負を懸けており、時価総額は8兆円を超えている。特集『EV・電池・半導体 脱炭素の最強カード』(全13回)の最終回では、昨年1月に日産自動車から電撃移籍した関潤・日本電産社長に、日本でEVシフトが遅れている理由と強気な将来戦略について語ってもらった。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)
米中欧がEVシフト
それでも日本が出遅れる理由
――中国に加えて、欧州が全面的に電気自動車(EV)へかじを切った。今年に入り、米国でもゼネラルモーターズ(GM)のメアリー・バーラCEO(最高経営責任者)がEVに注力すると宣言したばかり。なぜ、主要国・地域で日本だけが、EVシフトに消極的なのでしょうか。関さんは日産自動車出身なので、日本の自動車メーカーの立場も踏まえて見解を聞いてみたいです。
まず、日本で再生可能エネルギーの導入が遅れていることが要因です。EVは再エネ導入とセットじゃないと、普及するのが難しい製品ですから(EVは走行段階では二酸化炭素を排出しないが、その動力となる電気が化石燃料を燃やして作られている)。
もう一つは、この20年間、日本の自動車メーカーはハイブリッド車(HV)という世界有数の技術で潤ってきたことがあると思います。どの国も追随できない素晴らしい技術があるからこそ、なかなかEVに踏み切れないのです。
――それでも、日本と同じガソリン車大国だった欧州ですら、欧州域内に電池産業を育成してEVシフトすると言っていますね。