逆転勝ちがほとんどなかった
森保ジャパン

 日本が先制した56試合の内訳は49勝6分け1敗。カタールW杯への最終的な準備として、今月17日にUAE(アラブ首長国連邦)のドバイで行われたカナダ代表戦で1-2の逆転負けを喫するまで、森保監督に率いられる日本は無敗をキープしていた。

 対照的に先制された26試合は3勝2分け21敗。ドイツ戦の前の逆転勝利は19年1月に開催されたアジアカップのウズベキスタン代表戦まで、4年近くもさかのぼらなければいけない。

 先制した場合とされた場合とで、あまりに極端すぎる試合結果は何を意味していたのか。答えは単純明快だ。キックオフ前の準備を周到に積み、シナリオ通りの展開に持ち込めればめっぽう強い。対照的に不測の事態に対して、選手起用を含めた采配でなかなか試合の流れを変えられない。

 ドイツ戦でも前半33分に、GK権田修一(清水エスパルス)が献上したPKを決められて先制された。キャプテンのDF吉田麻也(シャルケ)は「このチーム、逆転勝ちがほとんどないんだよな」と不吉なデータを記憶に呼び起こしながら、一方で確信に近い思いも抱いている。

「でも、1点差のままならいけるかもしれない」

 前半はドイツに力の差を見せられ続けた。開始8分に高い位置でボールを奪い、カウンターから最後はFW前田大然(セルティック)がゴールネットを揺らすもオフサイド。その後はドイツのボールポゼッションが80%近くに達し、惜しい場面すら作れない展開が続いた。

 アディショナルタイムには、FWカイ・ハフェルツ(チェルシー)にゴールネットを揺らされた。1点ビハインドの状況を死守できず、選手たちが天を仰ぎかけた直後にVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が介入。オフサイドとなって九死に一生を得た。

 前半のほとんどで、ドイツの後塵(こうじん)を拝し続けたのはなぜなのか。トップ下で日本の攻撃を差配する鎌田大地(アイントラハト・フランクフルト)によれば、日本は「臆病だった」という。

「前半のまま試合が終わっていたら、間違いなく僕のなかでワーストの試合になった。日本はドイツをリスペクトしすぎていたし、ボールを奪ってからもプレーを怖がっていた」

 すべては前線からの守備が機能しなかった点に起因する。1トップの前田がスピードを駆使してプレスをかけても両センターバックに対応される。前田とともに最初にプレスをかける鎌田にもダブルボランチがつくなど、常に相手の方が数的優位に立つ状況を作り出された。

 最前線からボールを奪いにいけないから、本来ならば後に続く中盤の選手たちも逡巡(しゅんじゅん)する。結果として自陣に下がらざるをえなくなり、その分だけドイツに自由にボールを持たれた。鎌田は前半の日本を「後ろの方に人数がいるだけ、という状態だった」と厳しい口調で振り返った。

 それでも吉田が「いけるかもしれない」と確信を抱いたのは、前日22日にサウジアラビア代表が挙げた大金星も大きく影響している。2度の優勝を誇るアルゼンチン代表に0-1のまま食い下がり、後半に入って連続ゴールを奪って逆転。日本に先駆けて世界を驚かせた。

 そして、日本の森保監督もハーフタイムに動いた。MF久保建英(レアル・ソシエダ)に代えてDF冨安健洋(アーセナル)を投入。最終ラインを4バックから3バックにスイッチした。