AIの活用で進む
「クリエイティブの民主化」
アーティストやクリエイターではなく、ビジネスユースでフォトショップなどを使っている人にとっても、こうした技術の発展は重要だと考えます。
アドビは「クリエイティブの民主化」をうたっていますし、実際のところ、アドビが仕掛けずとも、クリエイティブの民主化は年々進んでいます。わかりやすい例では、一般人がどんどんYouTubeやTikTokを利用して、多くの人にクリエイティブを届けるようになっています。
その多くは、もともとビデオ編集を手がけていた人たちではありませんが、今は普通に映像を編集してYouTubeなどに公開しているわけです。それを可能にしたのは、アドビをはじめ、さまざまなクリエイティブツールが、どんどん簡単に使えるようになったからです。その蔭には確実に、AIによる技術の進化があります。
企業内でもクリエイティブの民主化は進んでいます。数年前までなら、プロのデザイナーに依頼しなければならないからと諦めていたデザインも、今や無料で使える素材とテンプレートを組み合わせるだけで、実現できる時代になりました。
AIの活用によってデザインツールだけでなく、PowerPointのようなプレゼンテーションツールなどにも、文字の適切な配置や配色、デザインの組み合わせをサジェストする機能が搭載されています。
素人だった人がどんどんクオリティの高いクリエイティブを発信すれば、それを見ている私たちの目も肥えていきます。すると、ここで好循環が生まれます。みんなが「自分でも同じようにクオリティの高い動画やデザインが作れるかもしれない」と考えるようになれば、誰もがクリエイターになっていくと思うのです。
こうしたクリエイティブの向上は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の入り口にもなり得ると考えます。仕事をよりよく駆動していくというとき、ノーコード・ローコードツールでも動画制作ツールでもよいのですが、ツールが使いやすいことは非常によい影響をもたらします。逆に、これほど使いやすくなったツールを使わないのはもったいないと考えなければなりません。使いやすくなったツールを、まずは使ってみようと思えるかどうかで、個人間の能力や企業間でも差が出てくるのではないかと感じます。
(クライス&カンパニー顧問/Tably代表 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)