厚生労働省・社会保障審議会「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」では、2012年4月から12回にわたり、生活保護に代わるべき生活困窮者支援の新しい枠組みについて、検討を行なってきた。

今回は、2013年1月25日に公開された報告書案と、報告書の取りまとめにあたっての議論を中心に、この報告書で提唱された新しい枠組みについて紹介したい。

現在、生活保護申請に至る手前で利用できる公的支援制度が貧弱過ぎるのは事実である。新しい枠組みは、その問題を、どの程度解決するだろうか? 現在の生活保護制度は、しばしば「私たちの払った税金を、あの人達に無駄遣いされてしまう」と捉えられているが、それ以上の「無駄遣い」となる可能性はないだろうか?

「引き下げ」実施は8月?
選挙に翻弄される社会保障政策

会場である都心のホテル宴会場入り口の表示。「華」という室名と「困窮者」の文字の対比が対照的だ

 はじめに、生活保護基準をめぐる昨今の動きについて、簡単に紹介したい。

 2013年1月18日、高齢労働省・社会保障審議会・生活保護基準部会(以下、基準部会)の報告書が公開された。1月23日には、同「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会(以下、特別部会)」の第12回(最終回)が開催され、報告書が25日に公開された。

 基準部会での議論と報告書を受け、政府・与党・厚生労働省を中心として、生活保護基準の切り下げが具体的に検討されている。現在の議論の中心は、切り下げ率・切り下げの実施時期などとなっている。とはいえ、前回レポートしたとおり、基準部会報告書には、「生活保護基準の切り下げは妥当である」ということを示唆する文言やデータが「全く」といってよいほど含まれていないのであるが。

 引き下げ時期・引き下げ幅に関して、毎日新聞は以下のように報道した。

「政府は27日、生活保護費のうち月々の日常生活費に相当する「生活扶助」の基準額について、13年度から3年間で670億円(約6.5%、国費ベース)減らす方針を決めた。さらに年末に支給する「期末一時扶助金」(1人1万4000円)も70億円カットし、生活扶助費を総額で740億円(約7.3%、同)減額する。削減は0.2%減だった04年度以来9年ぶりで、下げ幅は過去最大だ」

 1月29日、この方針は閣議決定された。時事通信の報道(http://www.jiji.com/jc/zc?k=201301/2013012900422)によれば、生活保護基準額の引き下げにより影響が出る懸念のある就学援助など一般低所得世帯を対象とした制度、住民税や介護・医療保険料の軽減措置、最低賃金等への波及を避ける意向も表明されている。