ひとまず今回は、国税庁が発表している「給与所得者の平均年収」(令和3年分)である443万円に少しプラスして、ご主人の収入を手取り額で450万円と仮定します。
そうすると、Kさんとご主人の年収を合計した世帯収入は650万円になります。
一方、支出額は月16万円(年間192万円)です。年間収入が650万円、年間支出が192万円ですから、差し引きすると年間458万円の黒字です。
Kさん夫婦が、開業資金の目安をどの程度だと考えているのかは分かりませんが、日本政策金融公庫の「2020年度新規開業実態調査」によれば、平均開業資金は989万円となっています(飲食業以外も含めての調査なので、あくまで一例とお考え下さい)。
ご夫婦がこれまでためてきた資産を使わず、ゼロから開業資金をためるとすれば、Kさんが現状の働き方を続けると、上記の平均額を上回る1374万円(458万円×3年)を3年間で調達できます。
相談文には「5年以内の出店を目指す」とありましたが、Kさんが正社員を続けた場合、目標よりも早い3年後にご主人の夢を実現できる可能性が高そうです。
Kさんが「今すぐアルバイトに転職」しても
夫の夢はかなう?
ただ、相談文の文面から判断すると、Kさんは1日でも早くフルタイム勤務を辞めたいように感じます。これまでの試算は参考値として、この後は、Kさんが今すぐアルバイト生活に切り替えた場合の家計収支を試算していきます。
転職後のKさんは、週に20時間以上働いて社会保険に加入する前提にします。相談文に記載のあった「ご主人の扶養に入り、労働時間を週4日程度(週20時間未満)に抑える」パターンはお勧めできないので。今回の試算からは割愛します。
回答の順番が前後しますが、その理由を先に説明しておきます。
ご主人がお店を持った場合は、保険と年金の形態が「国民健康保険と国民年金」に変わります。この場合、将来ご主人が受給する公的年金は、会社勤めの厚生年金を継続するよりも大幅に減少してしまいます。
ご主人がお店を出した後、経営が順調にいけば、国民年金のほかに国民年金基金や小規模企業共済などに加入して国民年金の不足を補うことはできます。
ですが、開業する前の段階では、売り上げや経費がどのくらいの金額になるかは判断が難しいのが正直なところです。「見切り発車」で扶養に入った結果、老後の家計に響く可能性も否定できません。
このため、ご主人が開店してから経営が順調にいくまでは、Kさん自身が社会保険に入る働き方をした方がよいでしょう。もちろん、Kさんが健康を害してしまっては本末転倒なので、労働時間はうまくコントロールなさってください。