約6割は定年退職で自然減、約4割は出向者の増加、既定路線ながら広がる衝撃

既定路線も業界内で注目集めた
MS&ADグループ「6300人削減」

 MS&ADグループは2022年度上期決算発表で、22年度から始まった現中期経営計画の最終年度である25年度までの事業費削減計画を公表した。その内容に、グループ内だけではなく、業界各社にも衝撃が広がっている。

 三井住友海上火災とあいおいニッセイ同和損保の損保2社に、三井住友海上あいおい生命保険を加えた中核3社で6300人の人員を削減し、人件費200億円を圧縮。さらに、損保2社で300に上る部支店・課支社の統廃合によって物件費を160億円、その他コスト削減で100億円、合計460億円を削減することを公表した。

 中でも新聞各紙や業界各社の耳目を集めたのは、6300人の人員削減だった。なにしろ、中核3社全体の18%に相当する規模だからだ。

 このうち、6割は定年退職者などによる自然減、4割は出向者の増加などで対応する計画だ。グループ各社にはバブル期前後に入社した社員が多く在籍しており、25年までに順次定年退職を迎えていくからだという。

 もっとも、これらの計画は現中計を策定した時点で見積もられていたものであり、既定路線。早期退職を募集するなど、新たなリストラは計画していない。

 こう解説すると、3社の社員は胸をなで下ろすかもしれない。だが、その先をシミュレーションすると、決してそんな余裕はなく、今よりも厳しい事業費削減策に直面する未来が見えてくる。

 そこで、損保2社について、22年度上期決算で発表された最新の実績数字と業績予想を反映させた、独自の事業費削減シミュレーションを行った。すると、25年度はもちろん、それ以降の年度に向けて、今以上のコスト削減と正味収入保険料の増収を、同時に進めなければならないことが浮き彫りとなった。

 次ページでは、シミュレーションの詳細について解説していこう。