迷走 皇帝なきJR東海#6写真:代表撮影/JIJI

JR東海の葛西敬之名誉会長は、「インフラ輸出」という安倍政権の成長戦略に乗じて、米国などにリニアモーターカーや新幹線を輸出しようとした。しかし、各地域で開発プロジェクトが浮かんでは消え、輸出による成長戦略はいまや風前のともしびだ。特集『迷走 皇帝なきJR東海』(全8回)の#6では、高速鉄道の輸出という虚構のために、血税が垂れ流されている実態を暴く。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

ワシントンのリニア案件に毎年2億円を献上
予算はJR東海役員の関連会社へ

 JR東海の葛西敬之名誉会長は生前、リニアモーターカーや新幹線の輸出は、自分なしには進まない仕事だと豪語していた。

 2017年にダイヤモンド編集部のインタビューで次のように話している。

「僕にしかできない仕事があるし、ある間はやるしかない。鉄道経営や関連事業は、経営者がどんどん変わってもできる仕事です。でも、リニア中央新幹線の話や海外(への輸出)の話は、人が代わると話が止まっちゃうからね」

 葛西氏は22年5月に死去し、もう一人のリニア輸出の推進役だった安倍晋三元首相も7月に凶弾に倒れた。二人を失ったいま、米国への輸出の機運は萎んでいる。

 だが、日本政府とJR東海などが二人三脚で始めた輸出プロモーションはすぐにはやめられないようだ。

 次ページでは、4億~5億円の国家予算が高速鉄道の輸出促進に投じられ、このうち半分弱が米国のリニアプロジェクトの調査費としてJR東海役員の関連会社に渡っている実態を明らかにする。また、そもそも海外で日本製のリニアや新幹線が走る「実現性」があるのかどうかについても、検証する。