「大規模通信障害」で混乱招くも
KDDIが増収達成
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の通信業界3社。対象期間は22年5~9月の四半期(3社いずれも22年7~9月期)としている。
各社の増収率は以下の通りだった。
・NTT
増収率:7.4%(四半期の営業収益3兆2173億円)
・ソフトバンク
増収率:5.8%(四半期の売上高1兆4466億円)
・KDDI
増収率:4.9%(四半期の売上高1兆3892億円)
今回分析対象とした四半期(22年7~9月期)における通信業界の一大ニュースといえば、KDDIの大規模通信障害だろう。
この通信障害では、7月2日未明から5日午後までの約61時間にわたって、KDDI(au、UQ mobile、povo)のユーザーの音声通話とデータ通信が利用しづらい状況になった。影響を受けたユーザー数は延べ3091万人を超える。不具合は物流・自動車・行政サービス・銀行などの社会インフラにも及び、大きな混乱を招いた。
KDDIは通信障害が収束した後、おわびとしてユーザーに「1人当たり200円」の返金を実施した。この措置が23年3月期の通期決算に及ぼす影響は約75億円の見込みだと、KDDIは第1四半期決算で試算していた。
他の2社にも当てはまることだが、KDDIは政府からの携帯電話料金の値下げ要請を受けて格安の新料金プランを導入したことで、通信料収入の面で苦戦していた。そうした状況下で、追い打ちをかけるように通信障害が起き、顧客からの印象が悪化したにもかかわらず、なぜ増収を成し遂げられたのか。
また今回の通信障害は、KDDIの通信サービスの契約数・解約率にどのような影響を与えたのか。次ページでは、通信業界3社の増収率の時系列推移と併せて詳しく解説する。