この報告書を受けた11月24日の自民党政調の全体会合において、防衛費増額の財源についての議論になった際に、萩生田光一政調会長は、「財源は国債である」と明言したそうである。また、同党政調の国防部会では増税反対の声が多く上がったとのことであり、防衛費の増額を増税によって行うことを回避できる可能性は高くなってきたようだ。
11月25日、中国海警局の76ミリ砲を搭載した艦船が、尖閣諸島周辺の日本の領海に侵入した。これは同有識者会議の議論の内容、そして岸田首相に手交された報告書が、以上指摘してきたように全く我が国の国防につながらず、むしろ我が国を経済社会の根底から弱体化させることにつながりうるものであることが明確になったことも、一つの背景としてあるのではないか。
つまり、岸田政権が我が国の国防・安全保障について全くと言っていいほど危機感を持たず、平時の発想で国防ごっこのようなことを、しかも緊縮思考でそれを進めようとしていることを、中国は見抜き、これ幸いと逆手に取られてしまったのではないかということである。そうであれば、こんな危機感に欠ける報告書は無視するか参考程度にして、国債を財源に、既存のものの組み合わせや使い回しではなく、本腰を入れた、防衛装備の増、自衛官の増等による、真に意味のある我が国国防力、自主防衛力の強化を進めるべきではないか。