日本の国力向上のため
考えるべき2つのこと

永濱利廣エコノミストがマクロ経済で就活を分析!「経済の先行きは悪くない、日本の『復活』に若者は貢献できる」ながはま・としひろ/第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト。
1971年生まれ。早稲田大学理工学部工業経営学科卒業、東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。95年に第一生命保険入社、日本経済研究センターを経て、2016年より現職。衆議院調査局内閣調査室客員調査員、総務省「消費統計研究会」委員、景気循環学会常務理事、跡見学園女子大学非常勤講師。景気循環学会中原奨励賞受賞。近著に『日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか 』(講談社現代新書)。
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 若い人には、こうした長期の経済状況も見据え、次のような指針を持つことをお薦めします。

 一つ目は、自給率の低さや産業の空洞化を解消するため、諸外国と差別化できる新しいコンテンツを生み出していくこと。

 第1次産業なら、高品質、高付加価値である日本の農産物や食料品は海外でも人気です。しかし、人材不足もあって生産体制が整わず、十分に供給できていないのは、もったいない状況です。

 たとえば九州程度の国土面積しか持たないオランダは、AIを駆使したスマート農業で世界第2位の農産物輸出国となっています。これは国として見習うべきです。

 また先進国で森林率が第2位の日本は、林業でも潜在力がある。木材輸出が過去10年で3倍に増加する中、生産量は横ばいで価格が上昇しています。ウクライナ侵攻でロシアからの木材輸入が途絶え、脱炭素化でプラスチックからの転換も予想されるので、林業は今後も市場拡大が見込めます。

 第2次産業では、日本が得意とするモノづくりを生かす道があります。中国が安い製品を大量に生産していますが米国が中国を排除したサプライチェーンの再構築を進めています。高い技術力を持つ日本が、低コストで高付加価値な製品の生産・供給拠点として再起できるチャンスです。

 第3次産業でも、引き続き、海外で評価の高いアニメや観光といった競争力の高いコンテンツを発信し続けていくべきでしょう。

 二つ目は、グローバルで通用する価値を持った人材になるため、社会に出るときから自身のキャリア形成をしっかり意識すること。

 統計によると、人手不足が続く中で若年層の平均賃金は上昇しつつあります。今後は欧米のように労働市場の流動性が高まり、ジョブ型雇用も増えるでしょう。能力の高い人なら国内外を問わず、より高い条件を提示する企業に転職し、キャリアアップしていくことができるはず。それはゆくゆく日本の賃金を底上げして経済を活性化させます。

 日本経済を覆う「不確実性」の正体は、長い目で見れば、主にバブル崩壊後にマクロの安定化政策を誤ったことが原因です。「日本が諸外国に劣っている」「日本人が努力を怠ったせいで経済が低迷している」というのは大うそです。

 日本が本来持っている魅力や潜在力を再発見し、生かしていけば、企業も個人も十分グローバルで勝負できるはず。若い人にはそうした意欲と自信を持って、社会に出てほしいと思います。