「円安不安」の先入観
本当の解決策は何か
ただ、利上げが永遠に続くわけではありません。インフレが落ち着けば、2023年後半にも米国は利下げに転じると見ています。そうなれば円高傾向へ戻ります。
また「円安は日本だけが金融緩和を続け、金利が低過ぎるのが原因」という批判をよく聞きます。
しかし、物価下落によって不景気が続くデフレ経済では、購買需要が盛り上がりません。その中で金融引き締め(利上げ)に転じれば、家庭は住宅ローンなどの金利負担が増して生活苦に陥り、ますます需要が落ち込むだけ。これは現実的ではありません。
もちろん足元で消費者を苦しめている急激な物価高は、円安による輸入物価の上昇がもたらしている面もあります。ただ、そもそもの問題は日本のエネルギーや食料の自給率が低過ぎ、輸入に頼らざるを得ないことにあります。
国は将来に向けて自給率を高める政策を打ちつつ、直近の対策としては、円安で大企業の税収が増えた分を、物価上昇で打撃を受ける中小企業、家計、年金生活者の負担軽減に回せばいいでしょう。
では、コロナ禍の影響はどうでしょうか。業種によってはテレワークが当たり前になったため、ビジネスパーソンの通勤需要がコロナ禍前の水準に戻る可能性は低いです。一方で、DX関連サービスの需要は拡大を続けるでしょう。
飲食、旅行、宿泊業はダメージが大きいですが、コロナ禍による産業構造の変化に対応できている企業を中心に回復しています。インバウンドも水際対策の緩和で戻りつつあります。今後コロナ禍が経済に与える影響は限定的と考えられます。
そう考えると、あながち暗い見通しばかりではありません。為替動向にもよりますが、短期的に日本経済が大きく落ち込むことはないと私は見ています。
注目すべきは、むしろ日本経済の中長期の見通しです。
日本経済はバブル崩壊後、低成長・低インフレ・低金利・低賃金の 「4低」が続いています。私はこれを「日本病」と呼んでいます。
原因は、日本人にデフレマインドが染み付いているせいです。給料が増えない、需要が盛り上がらず物価が下がる、金利も上げられない、企業の利益が増えず経済が成長しない、という悪循環に陥っているのです。この状況は楽観できません。
なぜ日本経済は「4低」に陥ってしまったのか。それはバブル崩壊後の金融緩和や財政支出が不十分で、景気を浮揚させる力が乏しかったことにあります。加えて、未曾有の円高によって日本企業が海外に生産拠点を移した影響で、国内産業は空洞化しました。
こうした状況を変えるためには、低迷したままの景気を上向かせるべく金融緩和を継続するのが現実的です。世の中の金回りを良くし、企業や個人にお金を使ってもらうことが経済復活の前提となります。
そのうえで、脱炭素、DX、人的資本、科学技術など経済成長につながりそうな領域に集中して国が投資(財政出動)をするのです。
また、円安のメリットを生かして海外企業を積極的に呼び込めば、それをてこに国内労働者の賃金を上げることもできます。日本企業より賃金が高い外資との間で人材獲得競争が起きれば、日本企業も賃金を上げるからです。